卵巣刺激後は全胚凍結か新鮮胚移植かどちらを選ぶべきなの(その1)
全胚凍結(フリーズオール)は、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を予防するためによって導入されました。ガラス化法などの凍結技術の改良により⑴採卵決定時のプロゲステロン値上昇により新鮮胚移植の妊娠率低下が予想される群、⑵着床前検査症例、⑶卵巣予備能が低下している患者の受精卵プールなど、様々な理由で治療に組み込まれるようになりました。
施設によっては全胚凍結を大前提であったり、新鮮胚移植をまずは考えたり様々だと思います。選択的に全胚凍結する施設が徐々に増加している傾向にあります。
新鮮胚移植が否定されているわけではありません。
生殖医療ガイドラインでは下記のように記載されています。
CQ.25 新鮮胚移植の有効性は?
- 全胚凍結後の凍結融解胚移植と比較し、新鮮胚移植は累積妊娠率・出生率は同等である (B)
- 採卵決定時に血中プロゲステロン値上昇を認める場合に新鮮胚移植をさけ凍結融解胚移植を行う(B)
- 採卵決定時に菲薄な子宮内膜を認める場合に新鮮胚移植を避け凍結融解胚移植を行う (C)
CQ.26 凍結融解胚移植は新鮮胚移植と比較して有効か?
- high responderでは初回の凍結融解胚移植において、新鮮胚移植に比べて出生率を高める可能性がある (B)
- 凍結融解胚移植が胎児発育や母体の妊娠合併症の発症率に影響を及ぼす可能性が指摘されている (B)
- 全胚凍結法は、本法の実施が有益であると考えられる症例に対して実施する (A)
当院では、上記を踏まえて全胚凍結を行う患者様を下記のように設定しておりますが、結局は迷ったら全胚凍結を勧めているような気もします。当院の初回、全体の移植方法を示したグラフをお示しいたします。最近は周産期予後も考えて新鮮胚移植・排卵周期凍結融解胚移植の割合を少し増やしてきています。
①OHSSリスクが高い患者様
②新鮮胚移植の着床率の低下が考えられる患者様
(トリガー時のP4上昇、菲薄な子宮内膜など)
③異所性妊娠歴や早産歴がある患者様
④貯胚の必要があると判断した患者様
⑤着床前診断の適応がある患者様
⑥当院の臨床データで新鮮胚移植成績が悪い患者様
文責:川井清考(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。