子宮NK細胞サブセット検査測定開始(2024年7月〜)
不育症・反復着床不全患者に対して子宮内膜・脱落膜で行う検査(子宮NK細胞サブセット検査)が測定可能となりました。
子宮NK細胞サブセット検査は不育症の提言2021で記載されている「研究段階にある検査」とされています。現在の不育症検査では65%が原因不明とされています。原因がわからなかった患者の原因を同定し、治療可能となる可能性を秘めています。
生殖免疫の第一人者である兵庫医科大学医学部 産科婦人科 福井淳史先生監修、聖路加エスアールエル先端医療研究センター提供のもと、構想から3年以上かかりましたが、亀田IVFクリニック幕張含めて2024年7月から国内数施設で先行して行うことが可能となりました。来年度には、日本全国で検査実施可能となるよう準備を進めています。
不育症の原因・検査は多岐にわたり、一施設で全ての検査を行うことが可能な施設はありません。また、ほとんどの検査が自費検査となりますので非常に高額となってきます。患者様に合わせて、どの検査を行うか相談しながら情報提供に努めていきたいと思います。
当院には、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、日本不育症学会認定医が在籍しておりますので、適宜対応させていただきます。
子宮NK細胞サブセット検査は「CD16-/CD56bright NK細胞率、CD16+/CD56dim NK細胞率、CD56+NKp46+ NK細胞率」を測定します。検査時期などが決まっておりますので、一度来院されてから検査日時を決定していきます。
※聖路加エスアールエル先端医療研究センター提供のサンプル画像
不育症の提言2021での触れられている不育症検査
①推奨検査
○子宮形態検査
・3D 超音波検査
・ソノヒステログラフィー(2D 超音波検査)
・子宮卵管造影検査(HSG)
○抗リン脂質抗体
・抗β2GPI 抗体
・β2GPI 依存性抗カルジオリピン抗体
・抗カルジオリピン IgG 抗体
・抗カルジオリピン IgM 抗体
・ループスアンチコアグラント(LA)
aPTT 法、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)法
リン脂質中和法
○夫婦染色体検査(染色体G 分染法)
○内分泌検査
TSH、fT4
○流死産胎児絨毛染色体検査
流死産胎児絨毛染色体検査 G 分染法
②選択的検査
○子宮形態検査
・MRI
・子宮鏡検査
○血栓性素因関連検査
・プロテイン S
・第XII 因子凝固活性
・プロテイン C
・アンチトロンビン
○抗リン脂質抗体
・抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体IgG
・抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体IgM
・フォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン(PS/PT)抗体
○自己抗体検査
・抗TPO 抗体
・抗核抗体
③研究的検査
○抗リン脂質抗体
・ネオ・セルフ抗体(抗β2GPI/HLA-DR 抗体)
○免疫学的検査
・末梢血:NK 活性、NK 細胞率、制御性T 細胞率
・子宮内膜:CD56brightNK 細胞率、KIR 陽性率、制御性T 細胞
推奨検査:臨床的エビデンスが十分にあり推奨される検査
選択的検査:対象疾患が不育症のリスク因子である可能性はあるが、エビデンスが不十分なもの。推奨検査に準ずる、またはある条件下では検査が推奨されるもの。
研究的検査:不育症との関連が示唆されているが、エビデンスはさらに不十分で現在研究段階にある検査。
当院で実施できない検査は、2024年7月現在 下記のみとなっています。
・フォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン(PS/PT)抗体
・子宮内膜: KIR 陽性率、制御性T 細胞
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文責:川井清考(院長)
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