健康女性における免疫細胞の月経周期変化(J Immunol. 2010)
不育症・反復着床不全のTh1/Th2の測定時期はいつ測っても大きな違いはないとブログで取り上げていますが、健康女性における免疫細胞の月経周期変化はどうでしょうか。こちらを示した文献をご紹介いたします。
≪ポイント≫
末梢血Th1/Th2は月経周期に関係しませんが、末梢血NK細胞活性は可能であれば黄体中期に測定するのがよさそうです。
≪論文紹介≫
Sungki Lee, et al. J Immunol. 2010 Jul 1;185(1):756-62. doi: 10.4049/jimmunol.0904192.
月経周期が正常な女性22名を登録し、月経周期中に末梢血を連続的に採血しました。CD3(+)CD4(+)細胞およびCD3(+)CD8(+)細胞の細胞内サイトカイン発現、Th1/Th2サイトカイン産生T細胞比率をフローサイトメトリー解析により測定した。NK細胞の細胞傷害性は、effector-to-target ratiosを50:1、25:1、12.5:1とし、LUを20%としてフローサイトメトリー解析で測定した。CD3(+)(p=0.046)とCD3(+)CD4(+)(p=0.002)のT細胞の割合は、黄体期と比較して卵胞期で増加しました。CD3(-)CD56(+)(p=0.010)およびCD3(-)CD56(dim)(p=0.012)のNK細胞レベル、およびE:T比50:1、25:1、12.5:1、LU20%におけるNK細胞傷害性は、卵胞期と比較して黄体期で増加しました。IL-10を産生するCD3(+)CD4(+)T細胞は、卵胞期早期と比較して黄体期中期で有意に低かったが、CD19(+)B細胞、CD3(+)CD56(+)NKT細胞、Th1サイトカイン産生T細胞サブセット、Th1/Th2サイトカイン産生T細胞の比率は、月経周期中に有意な変化は認めませんでした。末梢血NK細胞およびT細胞レベルならびにNK細胞傷害性は、月経周期中に変化しました。
≪私見≫
Th1/Th2を測定することは不妊治療の中では、周知されてきていますが、どのように評価するかは解決しなければいけない課題が複数あります。あくまで国内で測定しているのは、IFN-γ-producing Th cell (Th1 cell; CD4+ T lymphocytes with IFN-γ without IL-4) 値, IL-4-producing Th cell (Th2 cell; CD4+ T lymphocytes with IL-4 without IFN-γ) 値をフローサイトでみているだけですので、この一項目で着床の免疫を評価していくには限界があると感じています。最終的には他の免疫細胞と総合して過去の臨床成績結果を総合的に判断していくことが求められます。
月経周期との関連のレビューは以下もわかりやすいので迷った時には読み返すようにしています。
Sabine Oertelt-Prigione. Autoimmun Rev. 2012 May;11(6-7):A486-92. doi: 10.1016/j.autrev.2011.11.023.(Review)
文責:川井清考(院長)
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