不育症・反復着床不全のTh1/Th2の測定時期
≪論文の紹介≫
不育症・反復着床不全女性36名の排卵前後でのTh1/Th2比は差がなかったことをアメリカ生殖医学会2023年で報告させていただきました。
過去の報告も含めて、「不育症・反復着床不全のTh1/Th2の測定時期は大きく意識しなくてもよい」と考えています。
https://www.fertstert.org/article/S0015-0282(23)00904-4/fulltext
反復着床不全や不育症患者において、免疫学的な機序が原因であることは昔から考えられていることです。
Th1/Th2とは何を意味しているかですが、国内で測定されているのは「末梢血中の細胞内にIFN-γを産生しているCD3+CD4+ Th1細胞とIL-4を産生しているCD3+CD4+ Th2細胞の割合です。
過去の報告では、TNF-α/IL-4 比やTNF-α/IL-10 比でも不育症女性で差があることが報告(J Y H Kwak-Kim, et al. Hum Reprod. 2003 Apr;18(4):767-73. )されていますが、国内で検査会社に商業ベースで測定を依頼できるのはIFN-γ/IL-4 を用いたTh1/Th2比だけです。
ただし、ヨーロッパ生殖医学会の反復着床不全のgood practice recommendationでも、不育症のガイドラインでも免疫検査をルーチンで行うことは推奨されていません。
まだまだカットオフや検査結果に対する解釈が明確ではないからだと考えられます。
検査を正しく解釈するために、測定時期は重要になってきます。過去の報告では、卵胞期初期と排卵後初期ではTh1優位、卵胞期後期および黄体期中期から後期ではTh2優位細胞およびサイトカイン環境とされています。
ただし、健康女性において、Th1/Th2に関しては測る時期によって差がないとされています(Sungki Lee, et al. J Immunol. 2010 Jul 1;185(1):756-62. )
当院の報告では、下記のポイントも同時に報告させていただきました。
不育症・反復着床不全女性36名での報告
・排卵前後Th1/Th2比は差を認めず。
・排卵前後Th1/Th2比は黄体中期の末梢血NK cell cytotoxicity、子宮内CD16+/CD56dim NK cells では関連を認めず。
・不育症・反復着床不全女性ではTh1/Th2比、黄体中期の末梢血NK cell cytotoxicity、子宮内CD16+/CD56dim NK cellsのどれかに異常を認める症例が約61%認めた。
過去の関連するブログも参考になさってください。
後期流産・死産をくりかえし免疫療法が奏功した症例報告(当院症例)
Th1/Th2比測定は不妊治療に意味があるの?(論文紹介)
Th1/2異常による妊娠前後のタクロリムスの使用法と妊娠予後
不育症・着床不全分野での免疫学的検査について
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反復着床不全の様々な免疫療法(論文紹介)
反復着床不全に対する免疫療法のメタアナリシス
文責:川井清考(院長)
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