反復着床不全の大事な項目
2021年生殖医療ガイドラインが発刊されました。40個の項目がリスト化されていますが、29-35までの7項目が反復着床不全に関する内容です。記載としては、内膜受容能検査、内膜細菌叢検査、SEET法、Th1/Th2測定、ヒアルロン酸含有培養液、子宮内膜スクラッチなどです。
反復着床不全は良好胚を繰り返し移植するにも関わらず着床が成立しない症例と定義されています。ただし、女性年齢によって胚盤胞の正常核型(異数性)の割合は異なります。着床不全の一番の主たる原因は移植する胚の異数性と言われていますので、一概に何個戻したら女性の身体側に原因がある可能性が高いですという議論は女性年齢によって異なってきます。
反復着床不全の検査・治療は強く疾患を疑うときに実施すべきですが、この治療は赤ちゃんが産まれることが患者さまの主たる治療目的ですので、貴重胚の場合は先に原因精査することも行われています。
今回紹介する論文で①受精卵の質以外に着床不全に影響する因子、②胚盤胞の女性年齢のよる正常核型胚の割合、がまとまっていたのでご紹介いたします。
Baris Ata, et al. Fertil Steril. 2021. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.06.045
受精卵の質以外に着床不全に影響する因子
胚盤胞の女性年齢のよる正常核型胚の割合
Ata B, et al. Reprod Biomed Online 2012
Demko ZP, et al. Fertil Steril 2016
Barash OO, et al. Hum Reprod 2017
Hong KH, et al. Fertil Steril 2019
Irani M, et al. Hum Reprod 2020
≪私見≫
最近、反復着床不全は何回ダメだったら子宮側検査すべきでしょうか?という質問をよく受けます。化学流産をいれるべきか、出産歴があってもすべきか、良好胚がなかった場合の移植回数はどうかなど。
木を見て森を見ずの議論が、情報過多の時代だからこそ妊娠していない今何を選択していくべきかに関して最後の意思決定は患者様にあるべきだとは思いますが、ネットの情報と医療者が日々積み重ねている知識のアップデートを比較し会話されることに落胆することが多々あります。
ただ、時代の流れを感じるのと共に、患者に生殖医療を信じられない環境を作った私たちにも原因があるのだろうなと反省をする日常です。
全員が妊娠できる治療がないからこそ、お互い相手を尊重しあい意思決定を委ねられる環境を作っていくことが体外受精の保険適応なんかより大事なことだと思っています。
文責:川井清考(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。