Th1/2異常による妊娠前後のタクロリムスの使用法と妊娠予後

着床の部分は謎が多く、反復着床不全や反復流産の場合、免疫が関与していると昔から注目されています。不妊治療は海外を中心に発信される治療が多いのですが、タクロリムスの治療は杉山産婦人科新宿の院長である中川院長が発信し、世界に拡がりつつあります。原因ではあるもの周産期予後に関わる論文がなかったのですが、今回杉山産婦人科と成育医療センターより第一報が出ておりますのでご報告いたします。
方法:反復着床不全や反復流産のTh1/2比が10.3以上の109名の女性の前向き観察研究です。妊娠前からタクロリムス1-4mg/日を内服開始し周産期予後そして新生児の運動神経発達を調査しています。
結果:109名の女性から113名(4名双胎)で出産に至っています。双胎を含む9名(8.3%)が早産,妊娠高血圧症候群などの周産期合併症が2名(1.8%)、新生児の先天異常が1名(0.9%)であった。タクロリムスの内服量により出生体重、胎盤重量、臍帯のリンパ球濃度は差がありませんでした。新生児の運動神経発達も一般新生児と比べてて異常がありませんでした。この論文では反復着床不全や反復流産のタクロリムス治療が必要であった女性の周産期予後そして新生児の運動神経発達には差がなかったが、3000名規模の大規模研究を行っていく必要があるとされています。
Nakagawa Kら、Am J Reprod Immunol. 2019 doi: 10.1111/aji.13142.

≪私見≫

当院でも反復着床不全や反復流産にはTh1/2の測定を行っており、近隣の産婦人科と連携を取りながら妊娠中のタクロリムス内服を管理させていただいております。今回の論文でも妊娠前のTh1/2 10.3以上でのタクロリムス内服開始、妊娠中の使用法について記載がありますので参考にし、少しで、この治療が世界に広がっていき1人でも多くの患者様が救われるよう、当院でもデータを収集していきたいと思っています。今回の研究の面白いところですが、患者様の平均年齢は36歳相当で109名のうち94名(86%)が体外受精での妊娠なのですが、周産期合併症が異常に低いところです。通常当院での平均年齢は同じくらいの37歳ですが、ARTでの周産期合併症は20%前後あり周産期管理に関してもタクロリムスの未知なる可能性を感じずにはいられない、世界に誇る日本からの報告だと思います。
当院での反復着床不全や反復流産に患者に測定したグラフを以下に示します。Th1/2 10.3以上は 22.1%います。意外と患者数が多いことを感じています。

新型コロナウィルス感染の蔓延下におけるタクロリムス使用についての見解を杉山産婦人科のHPに中川先生が掲載されています。当院も投与が必要な患者には使用継続が妥当と判断しています。タクロリムスを内服されていらっしゃる、もしくは今後予定がある患者様には個別に外来でご説明させていただきます。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。