原因不明不育症に高用量免疫グロブリン治療は奏効する?(論文紹介)
不育症原因として子宮形態異常、甲状腺機能異常、抗リン脂質症候群、血栓性疾患、染色体異常など様々な要因が関わっていると言われていますが、50%以上は原因不明とされています。原因不明不育症女性に有効な治療法は確立されていません。妊娠初期に高用量の免疫グロブリン(IVIG)が、4回以上の流産をくりかえす原因不明不育症女性の妊娠転帰に効果があるかどうかを調査した国内からの報告です。
≪ポイント≫
高用量IVIG治療を受ける女性は、妊娠期間中、合併症の有無を注意深くモニターする必要があります。
≪論文紹介≫
Hideto Yamada, et al. EClinicalMedicine. 2022 Jun 29;50:101527. doi: 10.1016/j.eclinm.2022.101527.
原因不明のRPLに対する高用量IVIG治療の有効性を確認するために、二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、原因不明不育症は、妊娠4~6週から5日間連続して、毎日400mg/kgのIVIGまたはプラセボを投与されました。対象は,生化学妊娠を除く4回以上の流産既往があり、流産絨毛検体で染色体核型正常な流産を少なくとも1回経験している女性としました。主要評価項目は妊娠22週の継続妊娠率で,生児出生率は副次評価項目としました。試験薬を投与された女性に対してintention-to-treat解析、胎児染色体異常による流産を除いたmodified-ITT解析を行いました。
結果:
2014年6月3日から2020年1月29日まで、102名の女性をIVIG群(n=53:3名の女性が除外され50名の女性が治療を受けています。)またはプラセボ群(n=49)に無作為に割り付けられました。ITT解析において、妊娠22週の継続妊娠率(31/50 [62.0%] vs. 17/49 [34.7%]; OR 3.07, 95% CI 1.35-6.97; p=0.009) と生児出生率(29/50 [58.0%] vs. 17/49 [34.7%]; OR 2.60, 95% CI 1.15-5.86; p=0.03)はIVIG群ではプラセボ群より高くなりました。妊娠22週の継続妊娠率(OR 6.27, 95% CI 2.21-17.78; p < 0-001)および生児出生率(OR 4.85, 95% CI 1.74-13.49; p=0.003)は,妊娠4~5週目にIVIG投与群でプラセボ投与群と比較して増加しましたが,妊娠6週目のIVIG投与群ではプラセボ群と比較して妊娠22週の継続妊娠率および生児出生率の増加は認めませんでした。IVIG投与群の新生児4人に先天性異常が認められ、プラセボ投与群には認められませんでした(p=0.28)。
≪私見≫
免疫療法は当院でも実施していますが、中等量使用としています。中等量使用でも1回15-20万円かかり、今回の高用量プロトコールだと初期投与で100万円近くかかってしまいます。ただ、高用量プロトコールのみで救える妊娠・出産があるなら、検討していける選択肢になっていってほしいですね。
卵胞期、妊娠初期または中期に20〜50gのIVIGを1回、毎週または2〜4週間おきに点滴する方法の報告は複数ありますが効果の是非は分かれています。
- The German RSA/IVIG Group.Br J Obstet Gynaecol. 1994; 101: 1072-1077
- Christiansen OB, et al. Hum Reprod. 1995; 10: 2690-2695
- Coulam CB, et al.Am J Reprod Immunol. 1995; 34: 333-337
- Perino A, et al. Hum Reprod. 1997; 12: 2388-2392
- Stephenson MD, et al. Am J Reprod Immunol. 1998; 39: 82-88
- Jablonowska B, et al. Hum Reprod. 1999; 14: 838-841
- Christiansen OB, et al.Hum Reprod. 2002; 17: 809-816
- Kutteh WH, et al. Hum Reprod. 2010; 25: 2203-2209
- Hutton B, et al. BJOG. 2007; 114: 134-142
- Christiansen O, et al.BJOG. 2015; 122: 500-508
Yamadaらは、妊娠4-6週での高用量IVIG治療(20g/日,5日間)は1998年に初めて報告され,その後も原因不明流産を4回以上経験した女性において89-8%という高い生児率をえています。(Hum Reprod. 1998; 13: 2620-2623. ISRN Obstet Gynecol. 2012; 2012512732)
文責:川井清考(院長)
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