外来診療 乳がん凍結療法
早期の小さい乳がんに低侵襲治療(出来る限り体に対する負担を減らした治療)としてがん細胞を凍結し、死滅させる凍結療法があります。非切除治療と書かれているように、乳がんに針を刺すだけで切除しない治療のことです。
凍結療法は19世紀から皮膚疾患などに用いられはじめた古い歴史のある治療です。乳癌に対する凍結療法は世界各国で1990年から散発的におこなわれてきた治療法です。当院では2006年6月から同治療を開始し、2020年8月までに非切除凍結療法を465名の方に施行し、遠隔転移は1名、領域リンパ節再発は2名、局所再発は3名です。この長期観察の結果は乳房温存手術後の成績と同等以上の結果です。凍結療法の適応から、実際の凍結療法、そして経過観察まで系統だった安全な治療法の確立は世界に先駆けたもので、各国から注目されています。
乳がん凍結療法は、直径3.7mmの金属製の針とその先端の温度をマイナス170度に保つ機器を使用し、がん細胞を凍結させ破壊する治療法です。
凍結には局所麻酔のような局所での麻酔効果があるため、全身の麻酔の必要がなく、リンパ節の検査(前哨リンパ節生検といいます。当院では浸潤ガンに対して行います)の必要がなければ1時間の治療で終わり、日帰り治療が可能です。手術室で超音波検査(エコー検査)を用いて病変が確実に凍っていくのを確認しながら行います。局所麻酔下ですので、医師が患者様に声がけしながら治療を行います。
治療自体は40分程度ですが、凍結前後の準備もいれると、2時間弱の治療時間となります。さらに2時間ほど食事などをしていただき、病院内ですごしていただいき、その後ご帰宅いただきます。翌日は創部の確認のため外来に来ていただきますが、受診は亀田京橋クリニックでも可能です。
一方、浸潤がん(乳癌が乳管からでたがん)では、前に書いたようにセンチネルリンパ節生検が必要となります。リンパ節生検の準備のため2泊3日の入院が必要になります。手術は入院2日目に行います。リンパ節生検、凍結療法を同時に局所麻酔下に行います。約1時間半で手術は終了します。全身麻酔は施行しません。この治療ではリンパ節生検、凍結療法ともに自費診療になります。
凍結療法の適応
- 保険適応外治療に同意していただいた方
- がん組織の直径が1.5cm以下(良性腫瘍の方にも適用)
- リンパ節転移がないと思われる方
- ルミナルAとされるおとなしいタイプの乳がんがよい適応
- その他、医師が安全にできると判断した場合
メリット
- 切除傷がほぼ残らない(3mm程度)
- 痛みが少ない
- 凍結療法だけであれば日帰りで手術が可能である
デメリット
- 非浸潤がんの方:自費診療(日帰り) 38万5000円(税込)
- 浸潤がんで前哨リンパ節生検が必要な方 自費診療(2泊3日):合計約69万円~約71万円(税込:部屋の種類によって異なります)となります。
- 日本の健康保険にご加入のない方は、治療費用は異なります。
想定されるリスク
- 凍傷・皮膚壊死・瘻孔形成・出血などがあげられるが、現在までなし。
ただし、細径の針の穿刺による皮下出血はある。 - 凍結部の硬結触知がある。
- 稀に凍結後の乳房変形がある。
当院で治療をご希望する方は、まずは、乳腺科の外来受診をお願いいたします。
文責:亀田京橋クリニック・亀田総合病院 乳腺科
主任部長 福間 英祐(ふくま えいすけ)
【乳腺科外来】
なお、凍結療法、内視鏡下手術などは、亀田総合病院(千葉県鴨川市)にて行います。
乳腺専門の病理医が答える 乳がんの病理Q&A集(PDF:2.9MB)