ERA調整下個別化胚移植は成績改善を認めない(F &S Reviews 2022)
ERA調整下個別化胚移植が一部の患者に恩恵がある可能性があるものの、大多数の患者の成績向上に関係しない可能性、複雑の着床不全原因のごく一部しかレスキューできていない可能性が明らかになってきました(ERA調整下個別化胚移植は成績改善を認めない(多施設コホート研究))。なぜ、ここまで否定的な意見が多いかというと、ERA検査のためにかかるコスト(15万前後)と検査開始から結果までに2ヶ月近い時間がかかり治療が遅れることが主たる部分だと考えます。2022年までのメタアナリシスをご紹介させていただきます。
≪ポイント≫
ERA調整下個別化胚移植は体外受精において有望な介入だと期待されてきたが、一部の患者が恩恵をえる可能性があるものの、大多数の女性においては成績向上に関係しない介入であることがわかりました。
≪論文紹介≫
Huy Phuong Tran, et al. F &S Reviews. 2022.
DOI:https://doi.org/10.1016/j.xfnr.2022.06.002
PubMed/MEDLINE、ScienceDirect、Scopusの各データベースを検索した。標準的な胚移植を受けた患者と、ERAの結果を参考にした個別胚移植(PET)を受けた患者の体外受精の成績を調査した研究を対象とした。主な評価項目は、着床率、臨床妊娠率、妊娠継続率、流産率、生児獲得率でした。ランダムエフェクトモデルを適用して解析を行いました。
結果:
17件の研究(患者数7,052人、4RCT、13コホート研究)のメタアナリシスを行いました。ERA調整下個別化胚移植は、着床率(RR、1;95%CI、0.83-1.2)、臨床妊娠率(RR、0.99;95%CI、0.85-1.15)、妊娠継続率(RR、0.99;95%CI、0.89-1.11)、流産率(RR、1.12;95%CI、0.81-1.54)に差を認めませんでした。サブグループ解析では移植前にERA調整下個別化胚移植をおこなった場合のみ生児獲得率が上昇し(RR,1.24;95%CI,1.03-1.49)、反復着床不全では差を認めませんでした(RR、0.86;95%CI、0.64-1.36)。
≪私見≫
ERA検査は、今後の患者の体外受精成績にどのような検査意義・介入をもたらすのか、経済的負担、患者のストレス、治療の遅れなど様々な観点から実施医師から患者に伝えるべき責務があります。
原因不明の着床不全患者や貴重胚の患者にとっては、ERA検査を行い原因のひとつが潰せることも有益な情報だと考えています。
今回のメタアナリシスで特殊だったのは4RCTのうち、3RCTが検査会社関連の報告であったため解釈に偏りが発生してしまう危険性です。もう少し公平性の高いRCTが報告されることが好ましいですね。
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文責:川井清考(院長)
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