黄体補充を行わない排卵周期下凍結融解胚移植の成績は?(論文紹介)

ホルモン補充周期と排卵周期の凍結融解胚移植成績は変わらないというのが大きなコンセンサスです(メタアナリシス:Groenewoud ER. et al. Hum Reprod. 2013、その後のRCT:Groenewoud ER. et al. Hum Reprod.2016)。
ただし、周産期合併症(妊娠高血圧症候群など)の観点から排卵周期凍結融解胚移植が見直されてきています(Reeva Makhijani, et al.Reprod Biomed Online. 2020. Saito K, et al. Hum reprod. 2019.   Louise Laub Asserhøj, et al. Fertil Steril. 2021)。凍結融解胚移植時の内膜調整プロトコル(ホルモン補充周期・自然排卵周期・修正排卵周期(hCGトリガー))が単一胚盤胞移植における生児出生率および臨床妊娠率に及ぼす影響を評価した論文をご紹介いたします。

≪ポイント≫

黄体補充を行わない自然排卵周期・hCGトリガーを用いた修正排卵周期は、ホルモン補充周期に比べて成績が低下するわけではない。

≪論文紹介≫

Einav Kadour-Peero, et al. Arch Gynecol Obstet. 2022. DOI: 10.1007/s00404-022-06588-z

2013-2018 年に凍結融解胚移植(n = 2920 周期)の レトロスペクティブコホート研究。内膜調整プロトコルはホルモン補充周期(n=2645)、自然排卵周期(n=147)、修正排卵周期(hCGトリガー)(n=128))でした。主要評価項目は生児出生率とし、女性年齢、胚グレード、凍結融解日、不妊原因、子宮内膜の厚さによる調整を行いました。
結果:
女性年齢、胚のグレード、子宮内膜の厚さに関して各群間に有意差はありませんでした。生児出生率はホルモン補充周期群に比べ修正排卵周期群(38.3% vs. 20.9% P < 0.0001)、自然排卵周期群(34.7% vs 20.9% P = 0.0002 )で高くなりました。
臨床妊娠率はホルモン補充周期群に比べ修正排卵周期群(46.1% vs. 33.3% P = 0.0003)、自然排卵周期群(45.9% vs. 33.3% P = 0.002) で高くなりました。 修正排卵周期群と自然排卵周期群では、生児出生率および臨床妊娠率に差はありませんでした。

≪私見≫

この論文をご紹介した理由は、薬をほとんど使わない排卵周期がホルモン補充周期と比べて成績に遜色ないということを把握したかったからです。
この論文では、自然排卵周期はLHを尿中もしくは血中で測定して薬を全く使用しませんし、排卵周期も卵胞が18mmを超えた段階でトリガーをかけ黄体補充を行っていません。それでも、これだけの成績が担保されるわけですので、黄体補充なしの排卵周期も、患者様のニーズにあわせて行ってもよいのかなと思っています。
2022/6/24に行ったIgenomixユーザーズミーティングの排卵周期でのERA検査結果を見てみると、患者背景はわからないものの、ホルモン補充周期:Pre-receptive 1-2day 24.8% Early receptive 16.1% Receptive 46.3% Late receptive 8.7% Post-receptive 4.2%、修正排卵周期:Pre-receptive 1-2day 24.3% Early receptive 11.5% Receptive 49.3% Late receptive 9.9% Post-receptive 4.7%、自然排卵周期:Pre-receptive 1-2day 24.5% Early receptive 12.2% Receptive 50.5% Late receptive 8.5% Post-receptive 4.3%とされていて、あくまでHRT周期のimplantation windowが早期閉鎖をするというより内膜反応が少し鈍いという印象が大きいのかなと思っています。
このあたりも引き続き注視していく必要性があると思います。

文責:川井清考(院長)

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