ERA後個別化胚移植は今後の初回必須検査になる?その2(論文紹介)

ERA検査をいつ行うの?

患者様は「挙児希望」で不妊クリニックに来られるのですが、「早く妊娠したい」「費用対効果よく妊娠したい」という気持ちが裏側にあると思います。
私は「母体・胎児共に安全に医療を提供したい。無駄な医療介入をしたくないし、必要な医療介入をしなかったら受診していただいている意味がない」と思っており、押し売りにならないような医療を提供するようスタッフ一同取り組んでいます。
その際に考えるのがERA検査の導入時期です。ERA検査は着床不全の患者様には移植時の妊娠率を上げると考えられますが、全員に導入すると検査と検査結果を待つのに約1.5ヶ月かかりますし、費用もクリニックによりますが約15-20万程度かかります。 本当にルーチン検査としていいのでしょうか。

《論文紹介》

先日とりあげた、①採卵後まず凍結してERA検査を行い融解胚移植する群②採卵後、凍結融解胚移植をする群③採卵後、新鮮胚移植をする群で分けた論文のなかで費用対効果についてもとりあげられていたので、追加で触れてみたいと思います。
ヨーロッパとアメリカで生まれた赤ちゃん一人当たりの費用対効果を、この臨床研究で予定通り治療を行った患者数と生まれた赤ちゃんの数から推定しています。その結果、ERA検査をして融解胚移植する群の赤ちゃんが一人生まれるための平均費用は、何もしないで凍結融解胚移植した群よりも低く(ヨーロッパでは17%、アメリカでは15%、概算)、新鮮胚移植に比べて高くなっていました(ヨーロッパでは25%、アメリカでは16%、概算)。
Carlos Simónら.Reprod Biomed Online. 2020 DOI: 10.1016/j.rbmo.2020.06.002

《私見》

凍結融解胚移植にかかる費用がそれぞれ38万(ヨーロッパ)、52万(アメリカ)。採卵からERA検査をしない凍結融解胚移植までの費用がそれぞれ120万(ヨーロッパ)、229万(アメリカ)です。日本は体外受精費用が30-60万と言われていますし、移植も10-20万前後だと思います。私達からすると体外受精費用は高いなぁと思いますが、海外からすると安い方なんですね。 ちなみに日本の値段で推定してみたらどうなるか?と計算してみましたが、この論文の成績で比較するとERA検査を初回に行なったとすると割高にはなりそうです。 周りの生殖医療施設とディスカッションをしながらERA検査の介入時期を患者様にとって一番良い時期に提供していきたいと思います。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。