男性の妊娠前の健康管理(プレコンセプションケア)で推奨されている項目について

Q. 妊活に際して男性の方も何かした方が良いのでしょうか?
A. 元気な赤ちゃんを授かるために、男性の健康を維持することが大切です。そのために、いろいろと取り組むことがあります。

米国疾病予防管理センターでは、男性パートナーが取り組むべき、妊娠前の健康管理、いわゆる「プレコンセプションケア」について、以下の10項目を挙げています。
これらを確認して、健康維持に努め、元気な赤ちゃんを授かることにつなげてください。
今回は、米国疾病予防管理センターが出している「CDC Prevention Check list」で35歳男性の確認項目も考慮して、10項目に追加や修正を入れています。
わが国でも、国立成育医療研究センターが既に同様の提言をしています。

男性の妊娠前の健康管理(プレコンセプションケア) 10項目

  1. 妊娠出産のために計画を立てて、行動しましょう
  2. 性感染症(STI)やその他の感染症の予防と治療をしましょう
  3. 喫煙、薬物使用、過度の飲酒をやめましょう
  4. 有害物質に注意してください
  5. 不妊症を予防しましょう
  6. 健康的な体重を維持してください
  7. 自分の病気や家族の病気を確認しましょう
  8. 暴力について相談しましょう
  9. 精神的にも健康になりましょう
  10. パートナーをサポートしましょう

男性用のプレコンセプションケアとその各項目について
妊娠前の健康管理(プレコンセプションケア)と聞くと、女性のことを思い浮かべる方が多いと思います。しかし、妊娠前の健康管理は、男性にとっても重要です。男性もできるだけ健康でいることは重要です。自分の健康のためだけでなく、身近な女性や子どものために、男性にもできることがあるのです。
妊娠前の健康管理(プレコンセプションケア)は、自分のパートナーの健康の向上をサポートすること、父親として子どもたちを守ることも含まれてきます。妊娠前の健康管理は、あなた自身とあなたの愛する人たちに明るく健康的な未来を提供することなのです。
また、妊娠前から健康でいることは、健康な赤ちゃんが産まれてくることにもつながります。健康な両親のもとでは、赤ちゃんが早く生まれたり(早産)、低出生体重児になったりする可能性が低くなります。妊娠前の健康は、赤ちゃんにとっても、健康な人生の第一歩となるのです。
さらに、妊娠前から健康管理をしていくことで、健康的な家庭を築いていくことにつながります。今、健康に気を配ること、健康を見つめ直すことは、幸せな家庭をつくることにつながるのです。

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1. 妊娠出産のために計画を立てて、行動しましょう
自分の目標を文章に書き出したかどうかは別として、子供を持つか持たないかや、これを達成するためにどうするか、考えたことがあるのではないでしょうか。これは妊娠出産のためのライフプラン (リプロダクティブ・ライフ・プラン)です。計画を立て、行動することは本当に大切なことです。女性も男性も、そしてカップルも、自分自身の価値観、目標、リソースに基づいて妊娠出産のためのライフプラン(リプロダクティブ・ライフ・プラン)を立てることは、とても重要なことなのです。

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2. 性感染症(STI)やその他の感染症の予防と治療をしましょう
性感染症(STI)などの感染症の検査を受け、治療を受けてください。妊娠中も、自分自身とパートナーをSTIから守ってください。妊娠は、女性やお腹の中の赤ちゃんをSTIから守るものではありません。妊娠中にSTIを起こすと、女性や胎児にとって、生命を脅かすほど深刻な結果を招く可能性があります。また、STIの中には、不妊症(妊娠できない)の原因となるものもあります。

  • C型肝炎/B型肝炎/HIV検査
  • 梅毒の検査/クラミジア検査
  • 季節性インフルエンザ・ワクチン(風疹、おたふくかぜ)を含む重要な予防接種

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3. 喫煙、薬物使用、過度の飲酒をやめましょう
喫煙、特定の薬物の使用、過度の飲酒は、健康に悪影響を及ぼします。副流煙は、タバコを吸わない子どもや大人の早期死亡や病気の原因になることがあります。副流煙にさらされた妊婦は、妊娠中に副流煙にさらされなかった女性に比べて、低出生体重児を出産する確率が20%高くなると言われています。
また、男性の場合、アルコールの飲み過ぎやいわゆる「ストリートドラッグ」の使用は不妊の原因になることがあります。
飲酒、喫煙、薬物使用を止められない場合は、かかりつけ医や地域の医療機関、保健センターなどに相談しましょう。

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4. 有害物質に注意してください
合成化学物質、金属、肥料、虫除けスプレー(殺虫剤)、猫やネズミの糞など、職場や家庭で有毒物質やその他の有害物質にさらされると、男女ともに生殖器系の臓器や器官に害を及ぼすことがあります。妊娠しにくい体質になる可能性もあります。妊娠中、幼児期、児童期、思春期に少量でも浴びると、特定の病気になる可能性があります。職場や家庭で、有害物質やその他の有害なものから自分自身や大切な人を守る方法を学びましょう。

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5. 不妊症を予防しましょう
男性は生まれつき精子に問題がある場合があります。また、病気や怪我が原因で、その後の人生に問題が起きることもあります。精子の状態は、全身の健康状態やライフスタイルによって変化することがあります。精子の数や運動性を悪化させるものには、次のようなものがあります。
 1型糖尿病
 アルコールの大量摂取
 マリファナ、コカイン、アナボリック・ステロイドなどの薬物摂取
 喫煙
 年齢
 肥満
 虫除けスプレーや鉛などの金属など、有害な物質
 おたふく風邪などの病気、腎臓病などの重い病気、ホルモン異常など
 薬(処方薬、薬局で処方箋なしで購入できる薬、ハーブ製品)
 癌のための放射線治療や化学療法
生殖能力(妊孕能)について心配な場合は、医師または他の医療専門家に相談してください。当院ではプレコンドック男性不妊外来にて生活習慣の確認やその修正の指導も積極的に行っています。

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6. 健康的な体重を維持してください
太り過ぎや肥満の人は、心臓病、2型糖尿病、特定の癌を含む多くの深刻な疾患のリスクが高くなります。また、男性の肥満は男性不妊症に直接関係しています。低体重の人も深刻な健康上のリスクがあります。
健康的な体重を維持するためには、短期的な食生活の改善だけでは不十分です。健康的な食事と定期的な運動を含むライフスタイルが重要なのです。体重をコントロールすることによって、現在も、そして年齢を重ねても健康でいることにつながります。
低体重、過体重、肥満の方は、健康的な体重を維持する方法について医師や専門家に相談してください。

  • Body Mass Index 30以上の方は、栄養食事指導を保険診療で受けることができます。当クリニックでも受け付けています。

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7. 自分の病気や家族の病気を確認しましょう
自分や家族の健康状態や病気の状態を把握することは、生まれてくる赤ちゃんの健康にとっても重要です。あなたは、妹や従兄弟の病気が自分の子供に影響するとは思わないかもしれませんが、この家族の病気の情報を医師と共有することは重要なことなのです。
あなたの家族歴に基づき、医師は、あなたに遺伝カウンセリングを行うよう勧めるかもしれません。遺伝カウンセリングを受ける他の理由としては、流産や乳児の死亡、 妊娠しにくい体質(不妊症)、以前の妊娠中に生じた遺伝的疾患や先天性異常などがあります。
また、自分の健康のために、健康診断/人間ドック、がん検診を受診してください。

  • 体重、血圧測定、2型糖尿病、潜在性結核感染症なども確認

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8. 暴力について相談しましょう
幼児から高齢者まで、暴力は人生のあらゆる段階の人々に影響します。暴力は妊娠中のリスクにもなります。おもてに出てきている暴力による被害者や死亡者の数は、ごく一部です。暴力受けて回復した後でも、生涯にわたって身体的な後遺症や精神的なキズを抱えている人は、もっと大勢います。
もし誰かがあなたに暴力をふるったり、あなたが愛する人に暴力を振るっていたとしたら、だれかの助けが必要です。相談してください。暴力は人間関係や家族を壊します。もし、あなたが暴力的であっても、やめるという選択をすることができるのです。

  • この項目は日本ではあまり馴染まないかもしれません。CDCのある米国では女性の3人に1人以上が生涯になんらかの暴力をうけるという統計があります。また、妊娠中に家庭内暴力が始まると徐々にエスカレートしてしまったり、子供への虐待につながるということなどもあるので、この項目が入っているようです。

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9. 精神的にも健康になりましょう
精神的な健康とは、私たちが人生に対処する際に、どのように考え、感じ、行動するかということです。よい精神状態を保つためには、自分の人生を満足できるものにし、自分自身を大切にする必要があります。誰でも、時には心配や不安、悲しみ、ストレスを感じることがあります。うつ状態になることもあるかもしれません。しかし、これらの感情が消えず、日常生活に支障をきたすようであれば、助けを求めてください。医師や他の専門家に、あなたの気持ちや治療の選択肢について相談してください。

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10. パートナーをサポートしましょう
男性はパートナーとして、健康の向上のために、女性パートナーをサポートすることができます。例えば、パートナーが妊娠に備えて健康的な食生活を心がけているのであれば、あなたも一緒に健康的な食生活を送ることが重要です。また、パートナーがなんらかの病気を持っている場合は、医者にかかるように勧め、治療計画に従うようにうながすこともできます。
また、不妊治療をする場合も女性側のうける治療は、男性側に比較して身体的にも精神的にも負担がより大きいものが多いものです。不妊治療中もお互いに支え合ってください。

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≪筆者の意見≫

男性の妊娠前の健康管理、プレコンといってもいろいろと取り組むことが多いことがお分かりになったと思います。わたくしも日々患者さんにこれらのことをお話ししています。
元気な赤ちゃんを授かり、幸せな家庭を築くためには、まず自分の健康が大切です。妊活を機に自分の生活、健康を見直してみてはいかがでしょうか?

参考文献

  1. NIH, NHLBI Obesity Education Initiative. Clinical Guidelines on the Identification, Evaluation, and Treatment of Overweight and Obesity in Adults. Available online:
    http://www.nhlbi.nih.gov/guidelines/obesity/ob_gdlns.pdf (PDF-1.25Mb)
  2. Sallmen M, Sandler DP, Hoppin JA, Blair A, Baird DD. Reduced fertility among overweight and obese men. Epidemiology. 2006;17:520–523
  3. Frey, Keith A., et al. The clinical content of preconception care: preconception care for men. AJOG. Volume 199, Issue 6, Supplement B , Pages S389-S395, December 2
  4. Moos, Merry-K, et al. Healthier women, healthier reproductive outcomes: recommendations for the routine care of all women of reproductive age. AJOG Volume 199, Issue 6, Supplement B , Pages S280-S289, December 2008.
  5. Centers for Disease Control and Prevention. Recommendations to improve preconception health and health care—United States. MMWR Recommendations and Reports. 2006;55(RR-06):1–23.

文責:小宮顕(泌尿器科部長)

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