第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)結果の概要のご紹介

第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)結果の概要が、2022年9月9日、国立社会保障・人口問題研究所により公表されました。
本調査は、日本の結婚と夫婦出生力の動向やそれらの背景について定期的に調査し、関連諸施策や人口動向の把握に役立てる目的で実施されており、独身者調査、夫婦調査、で構成されています。
調査対象:
「令和3年国民生活基礎調査」で設定された調査区から無作為に選ばれた全国 1,000 調査区に居住する年齢 18 歳以上 55 歳未満の独身者と妻の年齢が 55 歳未満の夫婦(回答者は妻)
調査時期:
令和3(2021)年6月(6月 30 日現在の事実)
調 査 数:
独身者調査:配布調査票 14,011 票 有効票数 7,826 票(有効回収率 55.9%)
夫婦調査:配布調査票 9,401 票 有効票数 6,834 票(有効回収率 72.7%)

夫婦の出生力の変化を中心(夫婦調査の結果)に、不妊クリニックとして注目すべき内容を抜粋してご紹介します。

夫婦の出生力

<妻の年齢 45~49 歳の夫婦の平均出生子ども数>
妻の年齢が 45~49 歳の夫婦の平均出生子ども数は、妻の年齢 50 歳時の最終的な出生子ども数と見なすことができるため、本調査ではこれを夫婦の最終的な平均出生子ども数の指標としてとらえています。2002年(第 12回)調査以降で低下しており、今回調査では 1.81 人(前回1.86人)となりました。

<妻 45~49 歳夫婦の出生子ども数の分布>
妻の年齢が 45〜49 歳の夫婦の出生子ども数の分布をみると、前回調査よりも子ども 1 人または 2人の割合が高まり、3 人以上の割合が低下しました。

<妻の年齢50歳未満の初婚どうしの夫婦の平均理想子ども数と平均予定子ども数>
夫婦の平均理想子ども数は 2000 年代以降、ゆるやかに低下してきています。今回調査でも平均理想子ども数は前回調査の 2.32 人から 2.25 人へと小幅な低下がみられました。一方、1990 年代以降、漸減傾向が続いてきた平均予定子ども数については、今回調査は前回と同じ 2.01 人と横ばいとなりました。

<理想・予定子ども数の組合せ別にみた、理想の子ども数を持たない理由>
理想の数の子供を持たない理由(予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦)の調査では、理想子供数が3人以上で予定子供数が2人以上の夫婦(この多くは理想3人・予定2人の組み合わせ)では、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」の選択率が59.3%で最も多く、経済的理由が3人以上子供を持つことの壁となっていることがわかります。一方、理想的には1人以上の子供を持ちたいが、予定は0人(子供は持たない)と回答した夫婦の場合、「ほしいけれどもできないから」の選択率が61.5%にのぼりました。

 

<不妊についての心配と検査・治療経験>
<不妊を心配した夫婦は 3 組に 1 組以上、不妊の検査または治療経験がある夫婦は 4.4
組に 1 組に増加、結婚 5 年未満の夫婦の 6.7%が不妊の検査・治療中>
不妊について心配したことがある夫婦の割合は、夫婦全体(総数)でみると前回調査の 35.0%から今回調査の 39.2%へと増加しました(3 組に 1 組以上)。実際に不妊の検査または治療経験がある夫婦の割合(「検査・治療中」と「過去に検査・治療経験あり(検査・治療中を除く)」の合計)も、前回調査の 18.2%(5.5 組に 1 組)から今回調査の 22.7%に増加した(4.4 組に 1 組)。結婚 5 年未満の夫婦では 6.7%が、不妊に関する検査や治療を現在受けていると回答しています。

 

まとめ

調査からは出生子ども数が減少していることがわかりますが、結婚、出生の意欲の低下はあるものの、その理由としては経済的な理由、年齢的な理由や、ほしいけれどもできないという背景も多くあることがわかります。
日本では法的な婚姻関係と子供を持つことを持つことの結びつきが強く、諸外国のような婚外子の考え方が根付かないこともあり、結婚の時期が遅くなることも関係しているように思いますし、これに伴い不妊についての心配や実際に検査・治療を受けたことがある夫婦も増えていることが考えられます。
2022.4月からの不妊治療保険適用が開始しましたが、政府による少子化社会対策大綱の推進に関する検討会 中間評価(概要)「重点項目」に対する評価・今後の方向性では、結婚、妊娠・出産、子育てのライフステージに応じた総合的な少子化対策の充実を図り、一層強力に進めていくことを期待されており、方針として、男女双方の問題として、男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を促すプレコンセプションケアの推進なども出されています。経済的な支援、キャリアとの両立の支援、妊娠・出産から子育て期にわたる切れ目のない様々な角度からの支援が必要とされる中、我々も不妊に悩む方の治療はもちろんですが、プレコンセプションケアの推進等、将来子供を望むプレ妊娠世代への啓発にもクリニックとしてできることに取り組んで参りたいと思います。

文責:石川恵(事務長)

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