ERA®(子宮内膜着床能検査)は本当にやる意味があるの?(論文紹介)

ERA®検査は出生予後を改善しない?反復着床不全患者には着床前スクリーニング・ERA®どっちが効果的?とネガティブな論文が複数本出ている中、肯定的な論文はERA®の検査会社関連の研究者からメインで報告されているという実情があります。
私個人としては「ERAは難治性不妊患者には有用」という意見を今でも感じておりますが、ERA検査結果の解釈、そして患者様への伝え方は難しいなと日々感じています。検査の解釈が難しい理由としてRNAseqによる遺伝子発現の限界を感じています。
そのことを報告した論文をご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Bassil R, et al. J Assist Reprod Genet. 2018. DOI: 10.1007/s10815-018-1190-9
ERA未実施の患者と比較してERAを用いた個別化胚移植は妊娠率を向上させるかどうかを評価するために行った単施設のレトロスペクティブコホート研究です。
凍結融解胚移植0~2回の53名を対象にP+5でERAとNoyes基準による組織学的評価の両方を実施しました。比較対照群は、同期間にERAを実施せず凍結融解胚移植を行った患者としました。
結果:ERAを実施せず凍結融解胚移植を行った患者(対照群)は503名、ERAを用いた個別化胚移植を行った患者は41名でした。患者の年齢、過去の移植回数、子宮内膜厚、移植胚数などの患者背景に差がなく、継続妊娠率にも差は認めませんでした。(ERA未実施群 35.2% vs. ERA実施群 39%、p=NS)。

またERAとNoyesの組織学的基準の間には完全な一致を認められませんでした。

ERA検査結果 組織学検査結果

Pre-receptive 29症例
一致率 65.5%

Pre-receptive 18症例
Receptive 10症例
Post-receptive1症例

Receptive 19症例
一致率 31.6%

Pre-receptive 11症例
Receptive 6症例
Post-receptive2症例

Post-receptive 5症例
一致率 20.0%

Pre-receptive 2症例
Receptive 2症例
Post-receptive1症例

≪私見≫

ERAは約230種類の着床に関係する遺伝子発現のバランスをみて受容期を判断しています。組織学的検査は長い歴史上、部位によって内膜の受容期が異なって見えたり、判断する医師によって結果が異なったりするため普及しなかったのですが、慢性子宮内膜炎とERA®結果は関係する?にもあるように、とってきた組織検体の細胞バランスや状態によってERA結果は間違った受容期を示す可能性も否定できません。
当院では、必ずERA検査実施時には内膜の組織検査も併用し、検査精度が落ちないような努力をERA導入時より行い、継続しています。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張