子宮卵管造影の造影剤による甲状腺機能への影響(Gynecol Endocrinol. 2017)
子宮卵管造影(HSG)に使用する造影剤は油性造影剤リピオドールと非イオン性水溶性造影剤イソビストを用いて行われ、それぞれ10ml中に4.8gと3.0gのヨウ素が含まれるため一過性の甲状腺機能異常を起こします。では、どの程度、どれくらいの期間起こすか、なかなか説明される機会が少ないと思います。こちらを示した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
子宮卵管造影の造影剤は甲状腺に影響を及ぼします。水溶性造影剤の場合は22.5%が1ヶ月以内に潜在性甲状腺機能低下を発症し、24.4%が2〜3ヶ月以内に発症した。このことは、HSGの数ヵ月後でも甲状腺機能が低下したままであったことを示しています。
≪論文紹介≫
Shuhei So, et al. Gynecol Endocrinol. 2017 Sep;33(9):682-685. doi: 10.1080/09513590.2017.1307960.
ヨード造影剤を用いた子宮卵管造影(HSG)の甲状腺機能への影響を調べたレトロスペクティブコホート研究です。油溶性造影剤と水溶性造影剤を用いたHSG後の甲状腺機能(TSHとFT4)を比較しました。甲状腺機能が正常な患者164名と94名を対象としました。
TSHとFT4値の潜在性甲状腺機能低下ラインは基準集団の2.5パーセンタイルおよび97.5パーセンタイルを参考にしています。(TSH値:0.47mIU/Lおよび2.89mIU/L、FT4値:0.91 ng/dLおよび1.49ng/dL)
●油性造影剤使用患者164名と水溶性造影剤患者94名を解析対象としました。
油性造影剤使用患者34.3±4.3歳(1名:Basedow病)
TSH:1.45±0.56mIU/L FT4:1.21±0.14ng/dL
水溶性造影剤患者35.0±4.7歳(1名:Basedow病、2名:橋本病、1名:腫瘍)
TSH: 1.47±0.71mIU/L FT4: 1.21±0.14ng/dL
●HSG後、TSH値は油性造影剤使用患者で高くなり、fT4の変化はありませんでした。
油性造影剤使用患者
(1〜30日後:2.43 ± 0.94 mIU/L、31-90日後: 2.55 ± 1.40 mIU/L)
水溶性造影剤患者
(1~30日後:1.64±1.01mIU/L、31-90日後:1.47±0.75mIU/L)(表1)。
●潜在性甲状腺機能低下発症頻度以下の通りでした。
油性造影剤使用患者
1ヶ月以内:22.5% 、1-6ヶ月:24.4%
水溶性造影剤患者
1ヶ月以内:9.5% 、1-6ヶ月:3.6%
≪私見≫
子宮卵管造影(HSG)は油性造影剤で実施した方が、検査結果後の妊娠率増加が見込めるという報告は少なくありません。検査に何を求めるかが大事なんだと思います。
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文責:川井清考(院長)
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