子宮卵管造影検査の異常率について(当院の成績)

当院で行った子宮卵管造影検査の2016年か2020年までの結果をお伝えさせていただきます。

子宮卵管造影検査
実施総数:1394件
卵管の疎通性正常:82.8%(1154件)
拡散不良:10.2%(10.2%)

卵管因子(不妊原因)の割合は約20%とされています。当院のデータも同様の結果でした。次に卵管因子に影響をあたえると言われているクラミジア感染症の既往歴・子宮内膜症と卵管疎通性の関係はどうでしょうか。
クラミジア感染症既往歴は抗体検査陽性群を対象とし、子宮内膜症は体外受精までおこなっていて超音波などを含めてチョコレート嚢胞(内膜症性嚢胞)が確認できている症例に限り確認をしました。

  クラミジア既往歴あり クラミジア既往歴なし
卵管通過性不良 21.4% (44/236) 16.3% (162/1149)
  子宮内膜症あり 子宮内膜症なし
卵管通過性不良 22.7% (17/75) 16.7% (60/359)

クラミジア感染症既往歴や子宮内膜症がある方が卵管の状態がわるいことが伺えます。(厳密にいうとクラミジアは有意差がついていますが、内膜症はp=0.051なので症例数不足で内膜症で卵管の状態がわるくなるとはいいきれないのですが・・・)
これらのデータをみると一次スクリーニングをしっかり行って、クラミジア感染症既往歴がある方、内膜症がある方は早めに卵管の状態をチェックする必要があると考えています。

卵管に異常が見つかった場合は産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020に準じて方針をきめるようにしています(文末をご参照ください)。間質部異常があった場合は状況に応じて子宮鏡を用いて再評価を行います。間質部閉鎖や間質部閉鎖の場合は卵管鏡下卵管形成術(FT)もしくは体外受精を検討します。卵管周囲癒着・卵管采癒着や卵管留水症を疑った場合は腹腔鏡の適応を検討します。卵管留水症をみとめた場合は大きさ次第ですがMRIや子宮留水症の程度から体外受精-胚移植を先行するか、先に手術(卵管切除や人工的卵管閉鎖術)を行い体外受精-胚移植に進むかどうか検討します。
卵管因子の取り扱いは、手術・体外受精などをどの段階で考慮するか判断が難しいので、患者様の他の不妊原因や当院での成績に基づいて治療方針を個別に相談させていただいています。当院では複数の医師が勤務しておりますので、治療方針に行き詰まった場合は必ず所属する全員の医師で症例検討をおこない患者様に共有するシステムをとっております。

「子宮卵管造影で卵管に異常所見がみられた場合の取り扱いは?」産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020

  • 卵管間質部閉鎖の所見が得られた場合は機能性閉鎖を除外する(推奨度B)
  • 両側の卵管近位部閉鎖と診断された場合は、体外受精あるいは選択的卵管通水などを検討する(推奨度B)。
  • 卵管周囲癒着・卵管采癒着や卵管留水症が疑われた場合は腹腔鏡などのよる手術を行う(推奨度C)。
  • 卵管留水症を有し、胚移植を行っても妊娠しない場合には、卵管に対する手術を考慮する(推奨度B)。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。