子宮卵管造影後の合併症の調査(論文紹介)

2017年子宮卵管造影検査を実施したオランダ国内の73施設に12の質問からなる電子調査を行い、67施設からの子宮卵管造影5165件(油性造影剤3289件、水溶性造影剤1876件)の合併症報告をとりあげています。

  油性造影剤(3289名) 水溶性造影剤(1876名) P値
血管内混入 4.8% 1.3% <0.0001
塞栓症   0% 0%  
アレルギー 0.03% 0.1% 有意差なし
アナフィラキシー 0% 0%  
骨盤腹膜炎 0.3% 0.4% 有意差なし
合併症の合計 5.1% 1.8% <0.0001

Hum Reprod Open. 2020 DOI: 10.1093/hropen/hoz045.

≪私見≫

この論文を通して改めて感じたことは、水溶性造影剤での子宮卵管造影の方が合併症は少ないということです。もちろん、油性造影剤でも重篤な副作用がないですし、累積妊娠率も前向き研究では油性造影剤のほうが高くなっていますが、私は、子宮卵管造影は通っている卵管に対するtubal flushingという治療の位置付けではなく、卵管の異常を調べる検査だと考えていますので、少しでも合併症が少ない方がよいと思います。
50年以上続く古典的な検査である子宮卵管造影検査を再評価してくれていることは本当に勉強になる報告ばかりでした。水溶性が安全だという固定概念に固執し過ぎず、様々な角度から妊娠に寄与する方法を学んでいきたいと思います。

こちらに記載されていない子宮卵管造影後の甲状腺機能低下ですが、油性であっても水溶性であってもイオジン がふくまれているので、当院では甲状腺異常がある方はコントロールをおこなってから子宮卵管造影を実施するようにしています。水溶性の方が体内からの消失が早いことはわかっていますので、甲状腺異常があるから絶対できないという検査ではありません。(油性造影剤はイオジン 濃度 480mg/ml、水溶性造影剤は 240-300mg/ml 当院では300mg/mlの水溶性造影剤を使用しております。)

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。