なぜ子宮卵管造影でのヨード投与に過敏になるの?

今回は、「なぜ子宮卵管造影でのヨード投与に過敏になるの?」について記載させていただきます。答えは、ヨードを日常的にとる日本人では子宮卵管造影でのヨードを投与することにより胎児の甲状腺機能に影響を及ぼす可能性が否定できないからです。

甲状腺ホルモンは胎児期、乳児早期の神経発達に必須のホルモンです。
先天性甲状腺機能低下症は胎生期 または周産期に生じた甲状腺の形態または機能異常による先天的な甲状腺ホルモン分泌不全であり、神経細胞の障害を引き起こし重症な場合には精神運動発達の遅れを示します。早期発見、早期治療により予防できるものであるので、生まれたらすぐに検査を行います。
不妊症領域でなぜ甲状腺機能に着目するかというと、永続的はないですが一過性の甲状腺機能低下症を、お母さんの甲状腺疾患の治療や不妊検査の影響により起こすことがあるからです。一過性の先天性甲状腺機能低下症には①バセドー病の母親の服用した抗甲状腺剤の影響(出生後数日から 2 週後まで)、②母親からの阻害型抗体の移行(出生後3から6ヶ月まで)、③低出生体重児、④DUOX2、DUOXA2遺伝子異常、⑤ヨード過剰症(子宮卵管造影検査など)があります。
①から④は、避けられないものですが、⑤に関しては避けられうる可能性がありますので以前から議論の的になっています。

日本は世界有数のヨード消費地域であるわが国では今まで多くのヨード過剰症が原因と考えられる一過性の先天性甲状腺機能低下症の報告が数多くあります。妊娠週数 36 週以前の胎児は、ヨードに暴露された状況でも甲状腺へのヨード摂取を抑制できず、また、腎臓からのヨード排泄率も低いため、胎児はヨード過剰の影響を受けやすいと考えられています。特に油性造影剤(油性造影剤はイオジン 濃度 480mg/ml、水溶性造影剤は 240-300mg/ml)を用いた子宮卵管造影をうけたあとに妊娠した女性の全員が、一過性の先天性甲状腺機能低下症を発症する ことではわけではなく、そのほかの遺伝因子や食生活などの後天的な要素が加わってなるのではないかとされています。現在まで国内では造影剤使用量が多い場合、新生児の甲状腺異常が指摘された報告、胎児期に甲状腺腫を認めた報告が散見されるので、その後の児への影響はなさそうとされていますが注意をする必要があると考えています。

J Clin Endocrinol Metab 2013 DOI: 10.1210/jc.2013-1066
Ultrasound Obstet Gynecol 2017 DOI: 10.1002/uog.15902
Horm Res Paediatr 2015 DOI: 10.1159/000439381.

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。