高PRL血症の診断について

不妊症のスクリーニング検査の中の内分泌検査にはPRL(プロラクチン)が含まれており、PRLについては、「高PRL血症の診断は?」「高PRL血症の治療は?」という2つの別項目も設定されています。一定数、治療対象となる方がいらっしゃいますのでご説明いたします。
PRLは下垂体前葉から分泌されるホルモンで、妊娠時には胎盤なでも産生され乳腺の発達に寄与し、産褥期には乳汁の産生を促します。妊娠中、授乳中以外の時期にこのホルモンが過剰に分泌され、血液中の濃度が異常に上昇した疾患を高プロラクチン血症と言います。 高PRL血症の頻度は、一般婦人で0.4%、生殖異常のある女性で9.0%−17.0%(無月経 21.7% 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):17.0%)とされています。産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020では月経異常・乳汁分泌がある場合は測定をおこなうこと(推奨度A)、同時に甲状腺機能も測定すること(推奨度B)を勧めています。
PRL分泌には日内変動もあり、夜間に高く午前中に低くなります。食事・運動・ストレス・月経周期(排卵期・黄体期)に高値となるため、可能であれば排卵前の空腹・安静時の測定が好ましいのですうが、実際はなかなか難しいのが現状です。高PRLの基準値は、測定のキットによって多少異なりますが約30ng/mlを基準にしているところが多く、当院でも30ng/mlになった場合は空腹・安静時での再検査をおこなっています。
問診内容として最近の体重変化、寒がり、皮膚乾燥、頭痛は視野狭窄の有無などを確認します。服用薬剤が原因になることが多く、消化器薬剤のスルピリド(商品名:ドグマチール®️、アビリッド®️、ミラドール®️、ベタマック®️、クールスパン®︎、ビリカップ®︎)や抗うつ薬として使用されるSSRI/SNRI、婦人科でも使用されるH2ブロッカーやメトクロプラミドなど服用も確認が必要です。
また無月経で乳汁漏出がある女性の2/3が高PRL血症といわれているため、乳汁分泌がないかどうかは左右とも確認する必要があります。
視床下部・下垂体腫瘍の精査は明確な基準はありませんが、150ng/ml以上の患者様の大部分はプロラクチノーマがあることがわかっていますので、私たちは100ng/mlを基準として内分泌内科・脳神経外科専門の医師に相談をするようにしています。

当院の約2400名の挙児希望初診時のPRL測定では30ng/ml以上の患者様が2.5%、100ng/ml以上となると0.1%未満(2名)でした。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。