動画で見る顕微授精の流れ⑤卵子への精子注入_破膜

今回は新しい試みとして動画で一つの技術の一連の流れを動画で紹介しています。

今回紹介したい技術は卵子の中に精子を一つ入れて受精を促す顕微授精です。
顕微授精の一連の流れは以下の通りです。

① 卵子を探して培養液で洗浄
② 卵子の回りを取り囲んでいる卵丘細胞を取り外して成熟判定
③ 精子の探索と不動化
④ 卵子の紡錘糸観察
⑤ 卵子への精子注入
⑥ 受精確認

今回は、
⑤ 卵子への精子注入
になります。

卵子へ精子を入れる前に、先ず、卵子の回りを取り囲んでいるゼリー状の殻である透明帯に穴を空けて、次いで、卵子本体表面に小さな穴を空ける必要があります。

今回は卵子本体表面に小さな穴を空ける様子を動画で紹介します。卵子本体は薄い膜で全体を覆われています。精子を卵子の中に注入するためには、始めに膜に穴を空ける必要があります。膜に穴が空くときは膜が破けるような感じになるので、専門用語で『破膜』と呼ばれています。

アニメーションでは卵子表面にいきなり穴が空いていますが、実際にはガラスの針を使って穴を空けます。実際の顕微授精で見られる破膜は2パターンあります。これは卵子の膜が強いか弱いか(≒膜の弾力性が高いか低いか≒膜がよく伸びるか伸びないか)によって分かれます。

・卵子の膜が強い(≒膜の弾力性が高い≒膜がよく伸びる)場合
卵子本体の3時方向からガラスの針を表面に触れさせてから、奥の方(9時方向)に向かって真っすぐ押し進めていきます。この間、ガラスの針は卵子の中にめり込んでいるだけで、穴はまだ空いていません。ガラスの針の先端の動きを卵子の奥で止めます。この時も穴はまだ空いていません。卵子外側のゼリー状の透明帯に穴を空けるのと同じ要領で、ガラス針の先端が鋭利な刃物になるような力を発生させます。力を発生させる機械が右上の黒い筒で、右下のフットペダルボタンが押されると、機械が働いて破膜します。ガラスの針が卵子にめり込むことによってピーンと張った卵子の膜が、破膜後(動画開始から14秒後)から急にフッと張りがなくなって力が抜けるように見えることで膜が破れたことが分かります。

・卵子の膜が弱い(≒膜の弾力性が低い≒膜がよく伸びない)場合
卵子の膜が弱い場合はガラスの針を表面に触れさせてから、奥の方(9時方向)に向かって押し進める途中で、ガラスの針の先端が鋭利な刃物になるような力を発生させる前に、ブチっと、膜が自然に破れてしまいます。このように膜が自然に破れてしまったときは、即座に針の動きを止めて、それ以上奥には押し進めないで、その場で精子を注入します。

精子を卵子の中に注入する前には卵子の膜を破る必要があり、破れ方には2パターンあることを動画で紹介しました。この膜の破れ方の違いが顕微授精後の成績におよぼす影響は現在調査中で今年中に学会で発表予定です。いずれ紹介したいと思います。

次回はいよいよ卵子の中に精子を入れる様子を動画で紹介します。

文責:平岡謙一郎(培養室長)

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