自然妊娠・体外受精のMD twinリスクの差(J Clin Med. 2023)
体外受精は一卵性双胎の発生率を自然妊娠の1/250から1/50に増加させることが報告されています(Knopman J.M, et al. Fertil Steril. 2014;102:82–89.
Couck I, et al. Ultrasound Obs. Gynecol. 2020;56:831–836.)。胚盤胞培養・アシステッドハッチングが特に一卵性双胎リスクとされています。自然妊娠と体外受精妊娠の一卵性双胎を比較した時の周産期合併症に差があるかどうかを調査した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
体外受精MD twin妊婦は自然妊娠MD twin妊婦より妊娠糖尿病を発症する可能性が高くなりますが、その他の妊娠合併症、分娩様式、新生児転帰に関しては差を認めませんでした。
≪論文紹介≫
Alicia Martínez-Varea, et al. J Clin Med. 2023 Sep 21;12(18):6097. doi: 10.3390/jcm12186097.
自然妊娠と体外受精により妊娠した一絨毛膜二羊膜双胎(MD twin)の周産期転帰を比較することを目的としました。2015年から2021年にLa Fe University and Polytechnic HospitalでMD twinと診断され、分娩に至った症例を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。
結果:
MD twin 184症例のうち、149症例(81%)が自然妊娠、35例(19%)が体外受精妊娠でした。体外受精妊娠のMD twin患者では、母体年齢が高く(38.0[35.5-42.5] vs. 32.0[29.0-36.0]、p<0.001)、未分娩率が高くありました(80.0% vs. 50.3%、p=0.001)。妊娠合併症に関しては、妊娠糖尿病(22.9% vs. 2.7%、p<0.001)、妊娠高血圧症候群(22.9% vs. 9.4%、p=0.04)、切迫早産や前期破水(14.3% vs. 36.2%、p=0.015)などの妊娠合併症率が、体外受精MD twin妊婦は自然妊娠MD twin妊婦よりも高くなりました。双胎間輸血症候群の発生率(20% vs. 33.6%、p = 0.155)に差は認められませんでした。交絡因子で調整すると、体外受精MD twin妊婦は自然妊娠MD twin妊婦より妊娠糖尿病を発症する可能性が高いだけであった(aOR 7.86、95%CI 1.55-39.87)。新生児転帰について群間差はみられませんでした。
≪私見≫
MD twinはさまざまな周産期リスク上昇がありますが、体外受精と自然妊娠では多く変わらないという見解が最近多い印象を受けます。
体外受精MD twin妊婦は自然妊娠MD twin妊婦より妊娠糖尿病を発症率が高く、分娩週数、分娩様式、新生児転帰に関しては差を認めていないという同様のレトロスペクティブコホート研究があります。
Prats P, et al. AJOG Glob. Rep. 2022;2:100129. doi: 10.1016/j.xagr.2022.100129.
妊娠高血圧症候群、早産、IUFD、SGAに関して、自然妊娠MD twinと体外受精MD twinで差がないというメタアナリシスもあります。
Wang M, et al. Front. Pediatr. 2022;10:962190. doi: 10.3389/fped.2022.962190.
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文責:川井清考(院長)
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