子宮卵管造影と超音波子宮卵管造影法の妊娠率への違い(論文紹介)

ヨーロッパでは子宮卵管造影は卵管疎通性を確認する検査という位置付けから卵管疎通性がある女性に関しては卵管疎通性を良くするフラッシング効果を含めた治療の一貫で行われることもあります。
では子宮卵管造影(HSG法::hysterosalpingography)と超音波子宮卵管造影法(HyFoSy法:hysterosalpingo-foam sonography)の卵管フラッシング後の妊娠率はどうでしょうか。こちらを検討した論文をご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Nienke van Welie, et al. Hum Reprod. 2022. DOI: 10.1093/humrep/deac034

オランダの26病院で実施された18歳から41歳の不妊女性を対象とした無作為化デザインの多施設前向き比較研究です。
参加女性はHyFoSy法とHSG法の両方を無作為化された順番で受けました。結果が一致しない場合、女性は結果に基づく治療方法を行いました。HyFoSy法とHSG法の比較は、intention-to-treat解析において12ヶ月以内に生児出産に至る妊娠継続率としました。
結果:
2015年5月から2019年1月に、1,026人の女性がHyFoSyとHSGを受けました。HyFoSy法は97人(9.5%)、HSG法は30人(2.9%)、両方の検査で9人(0.9%)は検査結果が不明瞭でした。747名(73%)は検査結果が一致しました。HyFoSy法の結果に基づく臨床管理は、1,026人中474人(46%)妊娠継続したのに対して、HSG法の結果に基づく管理は1,026人中486人(47%)妊娠継続につながると推定されました(差1.2%、95%CI: 3.4%~1.5%)。HyFoSy法のHSG法に対する統計的に非劣性は証明されませんでした(P = 0.27)。ペインスケールではHyFoSy法の平均スコアは3.1(SD 2.2)、HSG法の平均スコアは5.4(SD 2.5)とHyFoSy法は痛みが少ない結果となりました。
結論:
卵管疎通性検査のHyFoSy法またはHSG法のいずれかの結果に基づいて治療方針を決定しても同様の妊娠率を担保されることが証明されました。

≪私見≫

今回のHyFoSy法では国内のように生理食塩水と気泡ではなく、5ccのExEm-gel®と5ccの滅菌精製水でつくった泡で検討しています。5分間は泡が消えないので日本でおこなわれているHyFoSy法より診断率が高いと考えられます。

この研究は、不妊女性においてHyFoSy法またはHSG法のどちらの結果を信用して治療方針を立てたとしても、同様の妊娠結果をもたらすことが証明されました。
疼痛に関してはHyFoSy法の方が少ない傾向がありました。妊娠結果は33歳前後の女性で運動精子数が5,000万前後いる不妊カップルに実施しています。

外来を実施していると、卵管通水検査しかされていないので再度HSG法を検討してほしいという意見があります。経験豊富な医師が提供したHyFoSy法であれば再検査をしないでも治療方針を当初の予定通り進めても問題ないことが奨励される結果だと思います。

文責:川井清考(院長)

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