子宮卵管造影の造影剤による甲状腺機能への影響(J Clin Endocrinol Metab. 2015)

子宮卵管造影(HSG)に使用する油性造影剤リピオドールは甲状腺機能低下を数ヶ月継続させることがわかりました(子宮卵管造影の造影剤による甲状腺機能への影響(Gynecol Endocrinol. 2017))。では、どの程度の期間で正常化するのでしょうか。国内の報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

油性造影剤を用いたHSG後は、6ヵ月までは甲状腺機能障害が残る可能性があります。

≪論文紹介≫

Terumi Kaneshige, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2015 Mar;100(3):E469-72. doi: 10.1210/jc.2014-2731.

リピオドールを用いた子宮卵管造影術前後の血清ヨード濃度(SIC)、尿中ヨード濃度/クレアチニン排泄量(UI/Cr)、甲状腺機能の変化を調べることを目的とした前向き研究です。2007年4月から2008年8月にHSGを実施した甲状腺疾患の既往歴のない不妊の甲状腺機能正常女性22名を対象としました。HSG前、HSG後4週、8週、12週、24週、9-12ヵ月にSIC、UI/Cr、甲状腺機能を測定しました。
結果:
SICとUI/Crの中央値はHSG後4週でピークに達し、HSG前と比較してHSG後8週、12週、24週でも高値が継続しました。血清ヨード濃度の上昇と一致して、TSH平均値は、HSG前と比較して、HSG後4、8、12、24週で有意に上昇しました。24週後、HSG前後のSIC、UI/Cr、TSH値の差は有意ではなくなりました。fT4、fT3平均値は、どの時点でもHSG前と比較して有意差は認められませんでした。3症例(13.6%)が、HSG後4週または8週で潜在性甲状腺低下(>5μIU/L)を認めました。

≪私見≫

子宮卵管造影後の妊娠初期や転院後に甲状腺機能検査をチェックする際には注意が必要ですね。また、油性造影剤を使う場合は使用量を適正利用することが必要だと思います。

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文責:川井清考(院長)

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