妊娠初期の妊娠高血圧予測代謝マーカーはBMIにより予測が異なる?(Am J Obstet Gynecol. 2023)

PE(妊娠高血圧腎症)リスクの予測は、周産期管理の上で重要です。平均動脈圧、子宮動脈PI、および血清PlGFの測定、女性の患者背景と既往歴を用いた妊娠11〜13週における現在のPEスクリーニングでは、妊娠37週未満の早期PE発症の約75%を同定することができます。PEスクリーニングをより改善するために更なるバイオマーカーが必要と考えられます。ただし、最近はPEリスクに関しても複数の表現系があるとされているので、バイオマーカーもタイプによって比較検討する必要があるのではないかと考えられています。
PE予測因子としての代謝物バイオマーカーを妊娠初期に検証した報告をご紹介します。

≪ポイント≫

いくつかの代謝物が早期PEと関連していました。しかし、女性BMIにより代謝物・代謝物比のPE予測値は異なっており、画一的なマーカー選択は現在のところ難しそうです。

≪論文紹介≫

Robin Tuytten, et al.  Am J Obstet Gynecol. 2023 Jul;229(1):55.e1-55.e10.  doi: 10.1016/j.ajog.2022.12.012.

BMIなどが関係しない妊娠初期におけるPE予測因子としての代謝物バイオマーカーを検証することを目的としました。
2010年から2015年に英国でPEスクリーニングを実施したに大規模前向き研究から抽出した観察的症例対照研究です。2,501名の単胎妊娠の11~13週血漿サンプルにおいて、周産期合併症の予測に関与すると考えられる予めアタリをつけた50代謝物を、標的液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて分析しました。アルギニン合成経路とNO合成経路に関与するアミノ酸レベルの比をバイオマーカー候補に追加しました。PlGFとPAPP-Aは全症例で入手されており、比較対象する予測因子としました。1,635名の対照群と106名のPE合併症妊娠のデータが検討され、BMIによって分類しサブグループ解析も行いました。
結果:
全体において13の代謝物が早期PEと関連しており(P<0.05)、そのうち6つ、2-hydroxy-(2/3)-methylbutyric acid、25-hydroxyvitamin D3、2-hydroxybutyric acid、alanine、dodecanoylcarnitine、1-(1Z-octadecenyl)-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphocholineに強い関連が認めました(P<0.01)。グルタミンまたはオルニチンを含む7つのアミノ酸比(Alanine/glutamine比、Alanine/ornithine比、Asymmetric dimethylarginine/ornithine比、Symmetric dimethylarginine/ornithine比、Symmetric dimethylarginine/glutamine比、Arginine/glutamine比、Arginine/ornithine比)も関連を認めました(P<0.01)。いくつかの代謝物および比率の予測精度は、BMIによって異なりました。

≪私見≫

妊娠初期PEスクリーニング精度をあげるためにPlGF/PAPP-A以外に候補マーカーを探した研究なのですが、最近PE発症のタイプも複数種類あるとされているのを反映した結果か、そう簡単にいかなさそうですね。

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文責:川井清考(院長)

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