子宮内膜症があると卵巣予備能(AMH)は低下する(Fertil Steril. 2018)
子宮内膜症があると卵巣予備能は低下するのでしょうか。システマティックレビュー・メタアナリシスをご紹介します。
≪ポイント≫
子宮内膜症性嚢胞があると、手術を実施していなくても、他の卵巣嚢腫がある女性、正常卵巣である女性に比べて卵巣予備能が低いことがわかりました。
≪論文紹介≫
Ludovico Muzii, et al. Fertil Steril. 2018 Oct;110(5):932-940.e1. doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.06.025.
手術を行なっていない子宮内膜症がある女性と子宮内膜症がない女性の卵巣予備能(AMH)を比較検討しました。2017年6月までに電子データベースを検索し、手術を行なっていない子宮内膜症と子宮内膜症がない女性の卵巣予備能を比較検討しました。
結果:
39件の研究を詳細に調査し、17件(968名の子宮内膜症女性と1,874名の子宮内膜症がない女性子)を選択しました。手術を行なっていない子宮内膜症女性では、子宮内膜症がない女性と比較してAMHが有意に低くなりました(平均差0.84、95%CI 1.16~0.52)。サブグループ解析では、子宮内膜症がある女性と子宮内膜症がなく他の卵巣嚢腫がある女性(平均差0.85、95%信頼区間1.37~0.32)および卵巣に卵巣嚢腫・内膜症がない女性(平均差0.61、95%信頼区間0.99~0.24)のいずれに対しても有意に低くなりました。
≪私見≫
子宮内膜症があると卵巣予備能が低下しているのは間違いなさそうですね。
他の報告として、片側・両側の子宮内膜症性嚢胞では両側で著名に卵巣予備能が落ちるという報告があるので、特に両側女性では注意を払う必要がありそうです。
Dorota Nieweglowska, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2015 Nov 24;13:128. doi: 10.1186/s12958-015-0125-x.
18~48歳の女性384名を対象とした前向き横断研究です。両側子宮内膜症性嚢胞女性78名および片側子宮内膜症性嚢胞女性157名において、健常女性149名とAMHを比較しました。両側子宮内膜症性嚢胞女性では、片側子宮内膜症性嚢胞女性(0.55;IQR:0.59 vs. 2.00;IQR:2.80;p<0.001)および健常女性群(0.55;IQR:0.59 vs. 2.84;IQR:3.2;p<0.001)と比較して、AMH中央値が最も低くなりました。AMHは、片側子宮内膜症性嚢胞女性と健常女性との間に差は認めませんでした(2.00; IQR: 2.80 vs. 2.84; IQR: 3.2; p = 0.182)。多変量回帰分析では、両側子宮内膜症性嚢胞(p = 0.003)と女性年齢(p < 0.001)のみがAMHと負の相関を認めました。
文責:川井清考(院長)
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