卵巣嚢腫(内膜症以外)の卵巣手術でも卵巣予備能は変化する?(Front Endocrinol (Lausanne). 2021)
子宮内膜症性嚢胞の手術では3ヵ月後のAMH値に有意な低下はみられなかったという報告がある一方、子宮内膜症性嚢胞術後3ヶ月から6ヶ月にかけてAMH値が上昇したという報告もあり、卵巣に対する手術に卵巣予備能に対する影響は不明のままです。では、卵巣嚢腫(内膜症以外)の卵巣手術でも卵巣予備能は術後どのように変化するのでしょうか。
≪ポイント≫
卵巣嚢腫(内膜症以外)の卵巣手術でも卵巣予備能は術後AMHの低下は6ヶ月まで徐々に回復します。
≪論文紹介≫
Huaping Li, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2021 Sep 24;12:671225. doi: 10.3389/fendo.2021.671225.
内膜症以外の腹腔鏡下片側卵巣嚢腫核出術を実施した女性67名と年齢をマッチさせた健常女性69名を比較検討した前向きコホート研究です。月経期のAMH、 FSH、エストラジオール、卵巣動脈抵抗指数、AFCによる卵巣予備能を測定し、術後1、3、6ヵ月の経過観察を行いました。
結果:
片側卵巣嚢腫核出術女性のAFCは健常女性と比較して、術後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月に差を認めず(それぞれF=0.03、F=0.02、F=0.55、p=0.873、p=0.878、p=0.460)、同様に嚢胞側のOARIも差を認めませんでした(それぞれF=0.73、F=3.57、F=1.75;p=0.395、p=0.061、p=0.701)。
術後1ヶ月で、AMH値は低下し、片側卵巣嚢腫核出術女性では1.88ng/ml[四分位範囲(IQR):1.61-2.16ng/ml]、健常女性では2.57ng/ml(IQR:2.32-2.83ng/ml)でした(F = 13.43, p = 0.000)。AMH値を年齢で層別化したデータでは、25歳未満と26-30歳で同じ傾向が観察されました。
片側卵巣嚢腫核出術女性のAMHは術前に比べて1ヶ月後では32.75%、3ヶ月後では19.63%、6ヶ月後では9.25%でした。
≪私見≫
この論文のわかりにくいところは、AMHは術後6ヶ月まで徐々に術後の減少傾向が回復傾向にありますが、AFCは術後から そこまで大きく変化なく術後6ヶ月目に低下傾向にあるところです。卵巣刺激を行う場合、AMHよりその周期のAFCが重要であるので、AFCが安定していればAMHの回復を待って体外受精をおこなう必要がないのかもしれません。
文責:川井清考(院長)
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