内膜突出筋腫をとると着床に重要な遺伝子発現が変わる(症例対照研究2023)
粘膜下筋腫が子宮内膜腺の萎縮、上皮の菲薄化、出血、広範囲の浮腫、炎症細胞の蓄積を引き起こし、プロスタグランジンや炎症性サイトカインの合成を増加させることは古くから知られています。内膜突出する筋腫をとると、内膜受容能に影響する遺伝子発現が変化するかどうかを見た研究をご紹介いたします。
≪ポイント≫
内膜突出筋腫をとると、摘出前に認められた炎症性子宮内膜NF-kB濃度が低下し、内膜受容能と関係するHOXA10、HOXA11、LIFが上昇することがわかりました。
≪論文紹介≫
Nur Dokuzeylül Güngör, et al. Fertil Steril. 2023 Mar;119(3):504-513. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.11.021.
FIGO type 0型およびI型子宮筋腫を子宮鏡下切除術で摘出することによりHOXA10、HOXA11、LIF、NF-kBの遺伝子発現変化があるかどうかを明らかにすることを目的に実施された症例対照研究です。
FIGO type 0型およびI型子宮筋腫 をもつ女性21名と子宮筋腫がなく卵管結紮目的に手術を予定されて子宮内腔異常がないコントロール女性8名で比較検討しました。
FIGO type 0型およびI型子宮筋腫群には子宮鏡下筋腫摘出術を実施し、対照群は腹腔鏡下卵管結紮術を実施しました。子宮筋腫摘出術前と3カ月後に、すべての参加者からフラッシング法により子宮内膜細胞を採取しました。リアルタイムPCRにてHOXA10、HOXA11、LIF mRNA発現を検討し、子宮内膜NF-kB濃度はELISA法を用いて測定しました。
結果:
0型筋腫(4.22±1.02ng/mL)およびI型筋腫(6.44±2.30ng/mL)の筋腫摘出前のNF-kBレベルは、対照群(0.54±0.10ng/mL)よりも高くなりました。0型および1型子宮筋腫の外科的摘出により、子宮内膜のNF-kBレベルは有意に低下しました(それぞれ1.33 ± 0.02 ng/mL、 1.65 ± 0.27 ng/mL)。0型子宮筋腫群では、筋腫摘出後にHOXA10 mRNAが11.1倍、HOXA11 mRNAが4.23倍、LIF mRNAが7.63倍増加しました。I型子宮筋腫群では、筋腫核出術後、HOXA10 mRNAが16.3倍、HOXA11 mRNAが8.34倍、LIF mRNAが9.38倍に増加しました。卵管避妊手術後のHOXA10、HOXA11、LIF mRNAは変化をしませんでした。子宮内膜NF-kBとHOXA10(r=-0.67)、HOXA11(r=-0.71)、LIF(r=-0.54)には、負の有意な相関を認めました。
≪私見≫
この論文、とったFIGO type 0型 子宮筋腫は平均1.68cm、I型子宮筋腫は平均2.36cmと小さいんです。それでも、着床に影響する遺伝子群が変化することは子宮内炎症性物質を除去するのが好ましいという論文と相違ありませんね。
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文責:川井清考(院長)
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