子宮内膜ポリープと慢性子宮内膜炎の関係(論文紹介)

子宮内膜ポリープと慢性子宮内膜炎の関係と治療方法については一定のコンセンサスは得られていません。今回、不妊症女性における子宮内膜ポリープ、慢性子宮内膜炎、子宮鏡所見と抗菌薬投与後の妊娠成績について示した国内からの報告をご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Mari Nomiyama, et al. Reprod Med Biol. 2021. DOI:10.1002/rmb2.12394

2017年7月から2019年10月までに子宮内膜ポリープが疑い子宮鏡検査を受けた115名(1群:子宮内膜ポリープがあり慢性子宮内膜炎をうたがう所見があった女性:38名、2群:子宮内膜ポリープがあり慢性子宮内膜炎をうたがう所見がなかった女性:31名、3群:子宮内膜ポリープがない女性:46名)の不妊女性をレトロスペクティブに検証しました。
子宮鏡で慢性子宮内膜炎を疑う所見としてマイクロポリープ、充血、間質性浮腫としました。慢性子宮内膜炎の組織学的診断基準は20HPFでCD138陽性細胞 10個以上としています。慢性子宮内膜炎の抗生剤投与はドキシサイクリンを14 日間処方し、再内膜生検は次の治療周期の卵胞期に繰り返し行いました。慢性子宮内膜炎が持続する女性には、レボフロキサシン水和物やメトロニダゾールなどの他の抗生物質を病理組織学的所見が正常化するまで最大3周期実施しました。

結果:
組織学的な慢性子宮内膜炎の割合は、1、2、3群でそれぞれ68.4%、32.2%、28.3%でした。子宮内膜ポリープの数は2群より1群で多くなりました。女性年齢および体外受精実施の有無を調整した結果、子宮内膜ポリープおよび慢性子宮内膜炎を有する女性の妊娠率は抗生物質治療とは無関係でした(調整オッズ比、0.44;95%CI、0.05-3.57)。1群は慢性子宮内膜炎と関連しており、子宮鏡所見は2群とは異なっていました。
慢性子宮内膜炎を伴う子宮内膜ポリープに対するポリープ切除後の抗生剤投与は必ずしも必要でない可能性があります。

≪私見≫

今回の結果から、子宮鏡でマイクロポリープ、充血、間質性浮腫がある場合、複数内膜ポリープである場合、形がいびつな内膜ポリープの場合は慢性子宮内膜炎を併発していることが多い点、内膜ポリープの大きさと慢性子宮内膜炎には関係がないことがわかりました。
この論文でも、慢性子宮内膜炎を伴う子宮内膜ポリープに対するポリープ切除後の抗生剤投与は必ずしも必要でない可能性があるとしていますが、私も同様の意見です。むやみやたらと抗生剤投与をするよりはポリープ病変があったら、とったほうがよいと思っておりますし、私たちのクリニックのデータでも他の国内の報告でも同様の結論となっています。
~過去の関連ブログ~
子宮内膜ポリープを有する慢性子宮内膜炎には手術
不妊症に対する子宮内膜ポリープ切除術の有効性について

文責:川井清考(院長)

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