慢性子宮内膜炎と子宮内膜ポリープ(論文紹介)

慢性子宮内膜炎と子宮内膜ポリープは、不妊女性に多く見られる疾患です。
慢性子宮内膜炎は子宮内膜の感染などを契機に、子宮鏡検査や組織学的検査で慢性炎症の徴候が認められることにより診断されます。子宮内膜ポリープは、子宮内膜から腺、間質、血管を含む組織が異常に増殖し内膜組織が肉眼的に突出した状態をさします。慢性子宮内膜炎と子宮内膜ポリープの関連性を調査したメタアナリシスです。

≪ポイント≫

  • 子宮内膜ポリープを持つ生殖年齢女性はCD138陽性慢性子宮内膜炎頻度が高くなります。
  • 慢性子宮内膜炎リスクは、内膜ポリープがない女性に比べて内膜ポリープがある女性で高くなります。
  • 内膜ポリープ数が1つより3つ以上で慢性子宮内膜炎リスクが高くなります。
  • 慢性子宮内膜炎と子宮内膜ポリープは関連性が高く、共通の病的過程の結果である可能性が高いが決定的な根拠には至っていません。

≪論文紹介≫

Amerigo Vitagliano, et al. Diagnostics (Basel). 2021.DOI: 10.3390/diagnostics11122182
電子データベースの検索により、開始時から 2021年9月までの観察研究から閉経前女性の慢性子宮内膜炎と子宮内膜ポリープの関連性を調査した論文を比較検討したシステマティックレビュー・メタアナリシスです。統計解析は,MedCalc 16.4.3(Ostend, Belgium)およびReview Manager version 5.3(Nordic Cochrane Centre, Cochrane Collaboration)を用いて実施しました。主要評価項目は、子宮内膜ポリープを有する女性における慢性子宮内膜炎の有病率を評価することです。副次評価項目は、子宮内膜ポリープのうちCD-138陽性子宮内膜ポリープの有病率を明らかにすること、子宮内膜ポリープを有する女性とポリープのない女性における慢性子宮内膜炎の有病率を比較すること、単一の子宮内膜ポリープを有する女性と複数の子宮内膜ポリープを有する女性における慢性子宮内膜炎の有病率を比較することとしました。
結果:
8件の観察研究(n =3,225)が対象となり、子宮内膜ポリープを有する女性における慢性子宮内膜炎の有病率は51.35%(95 %CI、27.24-75.13%)でした。子宮内膜ポリープのうちCD-138陽性子宮内膜ポリープの割合は70.73%(95%CI 、55.73-83.68%)でした。
子宮内膜ポリープを有する女性は、子宮内膜ポリープのない女性に比べて慢性子宮内膜炎の有病率が高くなりました(OR 3.07, 95% CI 1.59-5.95)。子宮内膜ポリープが3つ以上ある女性は、子宮内膜ポリープが1つの女性よりも慢性子宮内膜炎の有病率が高くなりました(OR 3.43、95%CI 1.

≪私見≫

慢性子宮内膜炎は臨床的に無症状であっても、原因不明不妊・不育症・反復着床不全の原因になるとされています。

子宮内膜ポリープと慢性子宮内膜炎に共通の病的プロセスがあるという考えは2013年にCarvalhoらによって仮説を立てられました。慢性子宮内膜炎における血管変化の70%は血管壁のヒアルロン酸が肥厚しており、子宮内膜ポリープの血管像と類似した形態となっていますし、血 管壁の血栓やフィブリノイド変性を伴うことも共通しています。慢性子宮内膜炎の原因菌として、腸球菌、連鎖球菌 、ブドウ球菌、マイコプラズマ属、Gardnerella vaginalis、ウレアプラズマ、 クラミジアトラコモナス、淋菌が考えられています。性感染症・細菌性膣炎をしっかり管理することが大事なのかもしれません。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張