慢性子宮内膜炎が起こりやすい人は?(論文紹介)

慢性子宮内膜炎は不妊原因として認知されてきています。無症状であるので、患者様は自分が慢性子宮内膜炎なのでは?と不安に陥ってしまいます。
では、どのような女性が慢性子宮内膜炎のリスクがあるのでしょうか。
臨床症状・子宮鏡所見・CD138免疫染色の関係を調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

  • 慢性子宮内膜炎は反復着床不全、異常性器出血、内膜増殖症、粘膜下筋腫のか女性に多い。
  • 慢性子宮内膜炎は排卵後より排卵前の方が診断されやすい。

≪論文紹介≫

Dongmei Song, et al.  Reprod Biomed Online. 2018. DOI: 10.1016/j.rbmo.2017.09.008.
2014 年 9 月から 2016 年 11 月に単一施設で閉経前女性1,551人に子宮鏡検査と子宮内膜生検を実施し関連を調査したレトロスペクティブなコホート研究です。
慢性子宮内膜炎はCD138免疫染色で10HPFあたり1個以上の形質細胞で診断としました(Kannar, et al. 2012)。
結果:
女性年齢、経産回数、流産回数は32.6±5.3歳、1.1±0.4回、1.9±1.1回でした。
慢性子宮内膜炎の全有病率は24.4%でした。有病率は、反復着床不全(40.8%、P < 0.001:)、異常性器出血(40.7%、P < 0.001)、内膜増殖症(50.0%、P < 0.05)、粘膜下筋腫(59.1%、P < 0.001)でした。増殖期検体における有病率(26.0%)は分泌期検体における有病率(17.5%)よりも有意に高くなりました(P < 0.05)。ロジスティック回帰分析により重要性の高い順に、臨床症状、子宮内膜増殖症、検体採取時期となりました。
反復着床不全は40歳未満女性において3回以上の移植周期で少なくとも4個の良質の胚を移植しても臨床妊娠に至らない場合と定義しています(Coughlan, et al. 2014)。

≪私見≫

慢性子宮内膜炎は排卵後より排卵前の方が診断されやすい理由は、形質細胞は内膜深部にあるため排卵後の方が深部の組織採取率が低いこと、慢性子宮内膜炎の有病率が高い異常性器出血の原因は排卵障害により内膜破綻のため排卵前と診断されることが多いことなどが挙げられていて、この辺りは私も同様の印象をもっています。
慢性子宮内膜炎=不妊ではなく、何が起こっていて何を解除すべきなのか、考えていくことが妊娠への近道になると思っています。

文責:川井清考(院長)

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