精子形態率でみた人工授精成績(J Urol. 2018)
人工授精の成功率には精液所見は重要です。過去にもブログで人工授精成績と精液所見との関係は取り上げています。
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では、精子形態率と人工授精との関係はどうでしょうか。メタアナリシスをご紹介いたします。
≪ポイント≫
総運動精子数が人工授精条件を満たす場合は、精子形態率が低いからといって成績低下はなさそうです。
≪論文紹介≫
Taylor P Kohn, et al. J Urol. 2018 Mar;199(3):812-822. doi: 10.1016/j.juro.2017.11.045.
精子形態が人工授精成績に影響を及ぼすかどうか調査したシステマティック・メタアナリシスです。 2017年1月以前の研究のうち、1)人工授精1周期あたりの超音波検査で確認された臨床的妊娠の記載あり、2)Kruger厳密基準を用いて精子形態を評価、3)4%および1%カットオフで実施された研究を系統的に検索しました。すべての研究において、女性の平均年齢は25-40歳、平均総運動精子数は1000万以上でした。推定値はランダム効果メタ解析を用いました。
結果:
41,018周期を含む20の観察研究からデータが抽出しました。4%カットオフでの人工授精1周期あたりの臨床的妊娠率は差がなく(14.2% vs. 12.1%、p = 0.06)、リスク差は3.0%(95%CI 1.4-4.6)でした。4%カットオフでの人工授精1周期あたりの臨床的妊娠率は差がなく(14.0% vs 13.9%、p = 0.97)、リスク差は(1.6%、95%CI -4.5-7.6)でした。
≪私見≫
今回のシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、精子形態率に焦点を当ててていますが、どの群も30歳前半であり、運動精子数もそれなりにいる症例が前提となっています。つまり、女性年齢が若く、総運動精子数がそれなりにいたら、精子形態率だけが低いからといって体外受精をむやみやたらとすすめなくてもよいのでは?という結論かなと思っています。
各研究の周期数中央値は534(範囲175~17,859)、女性年齢(平均±SD)は34.4 ±1.8歳で、4%以下群34.3 ±1.9歳、4%以上群34.4 ±1.8歳、1%未満群30.8 ±2.6歳、1%以上群32.6 ±1.2歳。平均総運動精子数は9,140万±6,750万であり、4%以下群では10,560万±7,110万、4%以上群では6,590万±6,740万、1%未満群では5,870万±3,260万、1%以上群では6,950万±6,290万でした。
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文責:川井清考(院長)
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