お知らせ 野木 真将 医師(ハワイ州クイーンズメディカルセンター・アソシエイトメディカルディレクター)が亀田総合病院に着任いたします。

総合内科部長 野木 真将(のぎ まさゆき) 医師
野木 真将(のぎ まさゆき) 医師は、ハワイ州のクイーンズメディカルセンターホスピタルグループのホスピタリスト(病院総合医)として活躍され、Alpha Omega Alpha (AOA) 協会ベスト教育アテンディング賞をはじめ数々の賞を受賞されておられます。ハワイ大学では、チーフレジデントとして総合内科・総合診療の研修医の教育にも従事していました。
現在は、クイーンズメディカルセンターのホスピタリスト部門長およびアソシエイトメディカルディレクターとして病院の運営管理に携わっていらっしゃいます。

この度、亀田総合病院の研修教育のクオリティの更なる向上と診療体制の構築のため、2023年6月より、野木真将医師が当院総合内科部長として着任いたします。

総合内科部長 野木 真将 医師のごあいさつ

総合内科部長に就任させていただくことになりました、野木 真将です。

私の生まれ故郷は兵庫県西宮市で、幼少期はアメリカのオハイオ州で過ごしました。中学時代、西宮市で阪神大震災を体験したことを契機に、救急医療に興味を抱き、医学の道を志望しました。京都府立医科大学在籍中に英国に留学し、総合医育成に長けた英国医学教育に深い感銘を受け、救急と総合診療の修行のために、宇治徳洲会病院の門を叩きました。良き指導者と同僚に恵まれ、充実した研修を経験することができました。研修期間中に、集中治療や急性期の総合内科診療に接し、総合内科の病棟管理をライフワークとすることを決意しました。同時期にチーフレジデントという後輩教育の要を務めた経験から、個人の努力だけに依らず良質な医師を育成するシステム構築の必要性を痛感しました。その後幸運にも、ハワイで米国の卒後研修トレーニングを受ける機会に恵まれ、将来的にその学びを日本へ還元することを目標に、米国でのキャリアを築いてきました。

ハワイ大学 RESIDENT OF THE YEAR 2014受賞

2011年に開始したハワイ大学内科レジデンシープログラムでは、病棟管理及び外来管理をバランス良く研修する機会に恵まれました。ハワイという地の利を活かし、環太平洋地域からの多様な人種や文化が交錯する環境において、自分の常識が相手の常識ではなく相互理解のために時間をかけて対話していくことの重要性、他職種の高い専門知識を理解して患者ケアを推進していく楽しさ、加速度的に増える医療現場での必要知識を更新していくことの必要性、そして専門分化された医療従事者の意見をまとめて最終判断を下す総合医の重要性を学びました。

チーフレジデントから学生への講義風景

2014年にハワイ大学内科チーフレジデントに選出され、同時に医学教育への理解を深めるべく、医学教育フェローシップを修了いたしました。次いで、遠隔教育にてFAIMER の医療者教育修士課程(MHPE )を履修し、国際認証及びアセスメント(評価)について専門的に学びました。米国のチーフレジデント制度は医学教育のみならず、早期から若手医師にリーダーシップやマネジメントの技能を培わせる優れた制度であると感じ、日本全国の有志とともに2017年に日本チーフレジデント協会(JACRA )を設立しました。前任の八重樫部長の御支援により、亀田総合病院の内科チーフレジデントにも、毎年指導する機会をいただきました。

チーフレジデントACPポスター発表

臨床面においては、2015年よりハワイ州オアフ島にあるクイーンズメディカルセンターでホスピタリスト として、病棟でのレジデント教育に従事してきました。1995年以降、アメリカではホスピタリストを中心に据えた大規模な総合内科病棟の普及率が増え、現在では8割以上の病院に採用されています。クイーンズメディカルセンターでは350床近くの総合内科病棟を約100名のホスピタリスト医師とナースプラクティショナー(診療看護師)と共に運営し、タスクシフトを巧みに利用することで、持続可能な働き方が実現されています。応用性の高い病棟管理体制のおかげで、2020年以降のコロナ禍で幾度となく襲来する波に翻弄されながらも、何とかハワイ州の医療体制維持に寄与できたと感じております。亀田総合病院においても、働き方の多様性を含めて、総合内科部門の発展に貢献したいと考えております。

ハワイアラモアナマジックアイランドにて

管理職面では、2019年よりクイーンズメディカルセンターのホスピタリスト部門長およびアソシエイトディレクターを兼任しております。組織マネジメントについて深く関与する機会を通じて、問題解決への緻密で迅速なアプローチや組織変革が米国医療の強みであることを感じました。一方で、米国医療は課題がまだまだ多く、アクセスの悪さや格差社会の歪みが医療現場に負担をかけており、その解決策を日々模索しております。私自身は、医学教育や情報テクノロジースキルを活用し、組織運営におけるコミュニケーションやスタッフ医師の生涯教育をサポートしております。

クイーンズメディカルセンターでは、臨床に従事する時間と管理職業務に費やす時間が各半分という独特の働き方を認めていただいておりましたが、さらに亀田俊明院長の総合内科に対する情熱と、両職場の温かいご理解に後押しされ、今回亀田総合病院で臨床教育業務に挑戦することを決意いたしました。私個人の力は限られており、不在時にはご迷惑をおかけするかもしれませんが、これまで総合内科を支えてきたスタッフの皆様と共に、日米双方の良さを取り入れながら一意専心で献身的に頑張りたいと思います。

12年ぶりの日本における診療活動ということで緊張しておりますが、米国で学んだ知見を後進に伝授し、病院のプロセス改善に関与できる貴重な機会を賜り、また新たな働き方を認めてくださった方々の期待に応えるべく、高揚感を覚えております。

最後になりましたが、千葉県内の皆様の健康を支援し、地域医療に寄与できるよう尽力いたします。また、総合内科・総合診療を志向する若き人々に対し、充実した病棟診療教育を通じて、「自分のコンフォートゾーンを飛び出し、新たな価値を創造する姿勢」や「総合医の仕事の価値」を示すことで、キャリア形成のロールモデルになれるよう精進いたします。

2023年春
野木 真将
執筆論文
1) Nogi,M. and Sekioka,T (2011) "Two case reports Acute Hemorrhagic Rectal Ulcer associated with Cytomegalovirus infection in immunocompetent patients" Journal of Japan Society of Coloproctology; Vol.64;1,2011

2) Sekioka T, Saitou M, Tanaka T, Hirata K, Takeda S, Miyasaka E, Nogi M (2011). A Case of Giant Sigmoid Diverticulum with Colonic Ileus Caused by Fecalith. Nippon Daicho Komonbyo Gakkai Zasshi, 64(3), 185–192.
3) Nogi M, Fergusson DJ, Chua Chiaco JMS (2014). Mid-ventricular Variant Takotsubo Cardiomyopathy Associated with Cannabinoid Hyperemesis Syndrome: A Case Report. Hawai'i Journal of Medicine & Public Health : a Journal of Asia Pacific Medicine & Public Health, 73, 115–118. PMID: 24765560

4) Nogi M, Bankowski MJ, Pien FD (2015). Septic Arthritis and Osteomyelitis Due to Bordetella petrii. Journal of Clinical Microbiology, 53(3), 1024–1027. PMID: 25540393
5) Nogi M, Bankowski MJ, Pien FD (2016). Wohlfahrtiimonas chitiniclastica Infections in 2 Elderly Patients, Hawaii. Emerging Infectious Diseases, 22(3).
6) Majewski LL, Nogi M, Bankowski MJ, Chung HH (2016). Bordetella trematum sepsis with shock in a diabetic patient with rapidly developing soft tissue infection. Diagnostic Microbiology and Infectious Disease; 86(1):112–114. PMID:27397578.
7) Ariyoshi N, Nogi M, Ando A, Watanabe H, Umekawa S (2016). Hypophosphatemia-induced Cardiomyopathy. The American Journal of the Medical Sciences; 352(3):317–323.
8) Ariyoshi N, Nogi M, Sakai D, Hiraoka E, Fischberg D (2017). Wanted and Unwanted Care: The Double-Edged Sword of Partial Do-Not-Resuscitate Orders. Journal of Palliative Medicine, 21(2), pp.143–148.

9) Ariyoshi N, Nogi M, Ando A, Watanabe H, Umekawa S (2017). Cardiovascular consequences of hypophosphatemia. Panminerva medica, 59(3), pp.230–240.
10) Nogi, M, Wong, L, Yamanaka, A et al. (2020) An evaluation of an interprofessional simulation training session on end-of-life-care conversations in the intensive care unit. J Interprofessional Educ Pract,21,100357
11) Singh, A., Nogi, M., et al. (2022) Elements Influencing Recruitment and Retention of Millennial Hospitalists Born in or after 1982: a Survey-Based Study. J Gen Intern Med 1–6.
表彰
2013 クイーンズメディカルセンターベストインターン賞
2013 ハワイ大学内科ベストレジデント賞
2014 ハワイ大学内科ベストレジデント賞, ベスト教育レジデント賞、クイーンズメディカルセンターベストレジデント賞, 外来診療ベストレジデント賞、リサーチ部門レジデント賞
2020 ハワイ大学ベスト教育アテンディング賞
2022 Alpha Omega Alpha (AOA) 協会ベスト教育アテンディング賞

注釈

ⅰ) FAIMERとは、国際医療教育の卓越性をプログラムと研究活動を通じて促進する非営利団体です。FAIMERは、ECFMG (外国医師教育評価委員会という、国際医師の資格を評価するための評議会)のミッションを支援する研究支援の団体として2000年に設立されました。

ⅱ) MHPE: Masters of Health Professional Educationの略

ⅲ) ホスピタリストや米国医学教育に関しては、拙書「あめいろぐホスピタリスト」(2018年丸善出版)および「あめいろぐ医学教育」(2022年丸善出版)で詳しく解説しています。

ⅳ) AOA medical school honor societyは、アメリカの医学部で最も権威のある栄誉団体の一つであり、医学部の成績優秀者に与えられます。

(公式)JACRA official website https://jacra-med.org/
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