ご来院の方へ 脊椎・脊髄疾患
腰椎疾患には椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変性すべり症、分離症、分離すべり症、椎間板症、腫瘍などのたくさんの疾患があり、腰痛や坐骨神経痛の原因になります。神経が圧迫されている場合は下肢にシビレ、痛みや麻痺が起こることがあります。治療としては、徹底した保存療法(投薬や注射など)を一定期間行い、症状がとれない、もしくは悪化する場合は手術療法をすすめています。手術方法は様々なものがありますが、当院ではなるべく身体への負担が少ない術式(低侵襲手術)を選択するよう心がけています。
一方、頚椎疾患には椎間板ヘルニア、頚椎症による脊髄症や神経根症、腫瘍、外傷などがあり、神経が圧迫されている場合は四肢(両手両足)にシビレ、痛みや麻痺が起こることがあります。治療としては、まずは投薬などの保存療法を一定期間行い、症状がとれない、もしくは悪化する場合は手術療法をすすめています。
対象となる主な脊椎疾患
腰椎椎間板ヘルニア
腰部脊柱管狭窄症
腰椎変性すべり症
腰椎分離すべり症
腰椎変性側弯症
腰椎圧迫骨折
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎症性脊髄症 神経根症
頚椎後縦靭帯骨化症
私どもが行っている代表的な脊椎手術の術式をご紹介します。
内視鏡を用いた腰椎手術
内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術(Microendoscopic discectomy: MED)
内視鏡下椎弓切除術(Microendoscopic laminotomy: MEL)
当院では腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の手術に本法を応用しています。直径16㎜のCCDカメラのついたチューブを患部に挿入し、ここからヘルニア摘出や狭くなった脊柱管の除圧術を行うものです。皮膚切開は約20㎜程度で、術後入院期間は5-7日程度です。日本整形外科学会認定の内視鏡手術技術認定医が在籍しており、安全な手術の提供に努めています。
腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術
腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板という組織が変性し、後方に脱出し神経を圧迫することで痛みやしびれ、ときに歩行障害や筋力低下などの神経症状を起こすものです。椎間板の脱出の仕方により、ときに激烈な痛みを起こすこともあります。治療として、はじめは保存治療が原則で、半分以上のものは保存治療で症状の改善が見込めますが、症状が遷延ないしは増悪するもの、発作的な痛みを繰り返すもの、神経障害を呈するものなどは手術治療が望まれます。腰椎椎間板ヘルニアの手術としては、当院では原則内視鏡を用いた椎間板摘出を行っています。
腰部脊柱管狭窄症に対する内視鏡下椎弓切除術
腰部脊柱管狭窄症は腰椎の支持組織の一つである、「黄色靭帯」が変性、肥厚し、馬尾神経や神経根を圧迫することにより発症します。神経の圧迫する部位や程度により、下肢痛、しびれや間欠は行、ときに排尿障害も起こすことがあります。症状が軽いものは、薬やブロックなどの保存治療が試されますが、症状が進行する場合や、排尿障害などの重い症状を伴うものは手術治療が望まれます。当院では、腰部脊柱管狭窄症が1か所であれば内視鏡を用い、2か所以上であれば顕微鏡を用いた除圧術を行っています。
腰椎すべり症に対する低侵襲腰椎後方椎体間固定術
背骨が「ずれる」ことを医学用語では「すべる」といいます。つまり腰椎すべり症とは「腰椎がずれることにより、腰痛や神経圧迫などの症状をきたすもの」をさします。腰椎すべり症の原因としては、変性によるもの、分離症を伴うもの、先天的な骨の低形成を伴うものなど、その原因は様々です。腰椎がずれているということは、腰椎が不安定である(ぐらぐらしている)ということを意味するので、手術を行う際は、神経の圧迫をとる操作(除圧)だけでなく、骨を安定化させる固定術の併用が必要です。当院では出来うる限りの低侵襲化を目指して術式改良しており、背筋を切開せず、腰椎に固定用スクリューを刺入するシステム(経皮的椎弓根スクリューシステム)を応用することにより、現在は皮膚切開は約4-5cmでこの手術を行っています。
腰椎圧迫骨折に対するバルーン椎体形成術(BKP)
骨粗鬆症とは「骨の脆弱化(弱くなること)により、骨折リスクの増大した状態」をさし、骨粗鬆症そのものが直接痛みを起こすわけではありませんが、脊椎をはじめ、手首、肩、太ももの付け根などに骨折を起こしやすく、いったん骨折を起こすと、疼痛のみならずさまざまな機能障害を起こします。なかでも脊椎圧迫骨折は、痛みや神経障害により、機能障害が大きいのですが、脊椎圧迫骨折に対するこれまで手術は大きな手術であることが多く、全員の患者さんに安全に勧められるものばかりではありませんでした。「バルーン椎体形成術(BKP)」は、バルーン(風船)を用い、つぶれた骨折椎体を広げ、安全な手法で中にセメントを注入する方法で、安全に骨折を瞬時に固めることで痛みをとる手術方法です。当院は本術式の施行および教育施設として認定を受けております。
低侵襲腰椎側方椎体間固定術
腰椎変性すべり症や変性側弯症などに対する比較的新しい術式で、腰椎の矯正力に優れるため、神経に直接触れることなく神経の圧迫を取ること(間接除圧)が可能で、現在広く施行されている術式です。メリットとしては、傷が小さいので出血量を最低限に抑えることができ、また背筋への侵襲も極力抑えることができます。変性した椎間板を大きなケージと入れ替えるため、椎間板腔が復元され、背骨の姿勢の歪みも矯正・整復することが可能です。
当院で扱っている主な頸椎疾患
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎症性脊髄症 神経根症
頚椎後縦靭帯骨化症
頸椎椎間板ヘルニアに対する前方固定術
頸椎椎間板ヘルニアは頸椎同士をつないでいる椎間板という組織が変性し、後方に脱出し神経を圧迫することで痛みやしびれ、ときに歩行障害や筋力低下などの神経症状を起こすものです。
脱出した椎間板がどこの神経を圧迫するか?によって、脊髄症、神経根症など多彩な症状を起こします。頸部痛や上肢痛を起こすような神経根症は、原則保存治療の対象ですが、1-2か月以上痛みが治らないものや、筋力低下などの神経症状を起こすような場合は手術を考慮します。また脊髄に圧迫が及んでいる場合は手術治療が望まれます。
手術は前方から椎間板を切除し、神経の圧迫をとり、人工骨とインプラントで固定する「前方固定術」や、症例によっては後方からの神経圧迫の除去と椎間板の切除を行う「後方除圧術」なども行っております。これらの治療法はすべて患者さんと相談しながら決定しています。
頸椎症性脊髄症に対する椎弓形成術
頸椎症とは頸椎の加齢性の変化で避けられないものですが、この変性(つまりいわゆる骨のトゲ)が、神経を圧迫することにより、いろんな症状を起こすようになります。脊髄を圧迫すれば「頸椎症性脊髄症」、神経根(神経の細い枝)を圧迫すれば、「頸椎症性神経根症」といい、神経圧迫が進み筋肉が痩せて萎縮するようになると「頸椎症性筋萎縮症」という病態になります。
治療は、頸椎椎間板ヘルニアと同様で、神経根症であれば、原則保存治療の対象ですが、保存治療でなかなか症状改善の得られない場合や、筋力低下などの神経症状を起こすような場合は手術を考慮します。また脊髄に圧迫が及んでいる場合も手術治療が望まれます。
頸椎後縦靭帯骨化症
頸椎を守っている後縦靭帯という支持組織は本来、やわらかい組織で脊髄を圧迫することはないはずですが、これが骨のように厚く固くなり、脊髄や神経根を圧迫することにより症状を起こします。日本や中国などの東アジアに多く、欧米の方々ではほとんど起こらず、日本では難病に指定されています。治療としては、脊髄の圧迫の方向や程度により、前方除圧、後方除圧、いずれの手術も行っています。
文責
佐々木真一(ささき しんいち)
亀田総合病院 亀田京橋クリニック 整形外科 部長
日本整形外科学会 専門医
日本整形外科学会 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
日本脊椎脊髄病学会 脊椎脊髄外科指導医
日本内視鏡外科学会 技術認定医(整形外科)
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