新型コロナウイルス感染と早産(論文紹介)
妊娠中の新型コロナウイルス感染は周産期経過に影響を及ぼすと考えられています。Villarらは、最近の国際的な多施設コホート研究で、新型コロナウイルス感染により早産率が59%増加したことを報告しました(JAMA Pediatrics. 2021)。
しかし、人種間や慢性疾患などが、新型コロナウイルス感染により早産率とどのように関連しているかはわかっていませんでした。今回、カリフォルニア州の出生コホート研究がでてきましたのでご紹介させていただきます。
≪論文紹介≫
Deborah Karasek, et al. The Lancet Regional Health. 2021.
DOI: https://doi.org/10.1016/j.lana.2021.100027
方法:
2020年7月から2021年1月の間にカリフォルニア州の出生証明書で記録された出産児のうち、新型コロナウイルス感染と早産の関連を調べました(n=240,147)。
超早産(32週未満)、早産(37週未満)、早期正期産(37および38週)、および正期産(39~44週)に分類しました。また、新型コロナウイルス感染診断、高血圧、糖尿病、肥満が超早産および早産に及ぼす効果を推定しました。
結果:
新型コロナウイルス感染は,2020年7月から2021年1月の間に全ての人種/民族グループで増加しAmerican Indian/Alaska Native (12.9%)、Native Hawaiian/Pacific Islander (11.4%)、Latinx (10.3%)の順に多くなりました。
新型コロナウイルス感染は、超早産(aRR 1.6、95%CI[1.4、1.9])、早産(aRR 1.4、95%CI[1.3、1.4])、早期正期産(aRR 1.1、95%CI[1.1、1.2])のリスク上昇と関連していました。人種・民族や保険制度による全体的な関連性は認めませんでした。新型コロナウィルス感染は、高血圧、糖尿病、肥満の人で早産のリスク上昇と関連していました。
結論:
新型コロナウイルス変異株の流行していることを加味すると、妊娠時には新型コロナウイルスワクチン接種などの予防措置を優先すべきです。
≪私見≫
新型コロナウイルス感染は、早産リスクを40%、超早産リスクを60%、早期正期産リスクを10%増加させることがわかりました。新型コロナウィルス感染妊婦の早産率は11.8%であり、感染のない妊婦の早産率 8.7%に比べて高くなりました(RR 1.4、95%CI [1.3, 1.4])。今回の論文では人種間も調査されており、Asianも31,572名登録されており全体の13.2%にあたります。
Asianも早産リスクが上昇していました(12.0% vs. 8.4%、aRR 1.6 [1.3, 2.1])。
今回の調査では新型コロナウイルス感染の重症度、時期、ワクチンとの関連は示されておりません。今、私たちにできることは「新型コロナウイルス感染と向き合い、それぞれの立場から可能なことをサポートしていく。」これらの積み重ねが大事なのかもしれません。改めて、妊婦・挙児希望の患者様への新型コロナワクチンへの正しい情報提供を進めて参ります。お子さんを望む方たちに、私たち医療者ができる使命をひとつずつ。。。
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文責:川井清考(院長)
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