妊娠前・妊娠初期を含めた新型コロナウィルスワクチンの推奨(CDC update 2021年8月現在)

厚生労働省の新型コロナウィルスワクチンに対するQ &Aでは今まで妊娠中、授乳中、妊娠を計画中の方もワクチンを接種できることができますと記載したうえで、「器官形成期である妊娠12週までは偶発的な胎児異常の発生との識別に混乱を招く恐れがあるため、接種を避けていただくこととしています」と説明文書がありました。しかし、今回下記のように表記が変更されました。
「産婦人科の関連学会は、海外における多くの妊婦へのmRNAワクチンの接種実績から、ワクチンは妊娠初期から妊婦と胎児の双方を守り、重篤な合併症が発生したとの報告がないとしています。また妊娠中のいつの時期でも摂取可能としています。」
こちらには先立ってCDCの声明やv-safe妊娠レジストリの最新アップデートが根拠となっていると思います。

CDCは、妊娠中女性に対する新型コロナウィルスワクチンの安全性に関する新しいデータを発表し、12歳以上のすべての人に新型コロナウィルスワクチンを接種することを推奨しています。
https://www.cdc.gov/media/releases/2021/s0811-vaccine-safe-pregnant.html
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/recommendations/pregnancy.html

CDC責任者は、「CDCは、COVID-19から身を守るために、すべての妊娠中の人、妊娠を考えている人、授乳中の人にワクチンを接種することを勧めています。ワクチンは安全で効果的です。感染力の高いデルタ変異株に直面し、ワクチンを接種していない妊娠中女性の新型コロナウィルス感染の増加や予後を見ていると早急にワクチンをうつことを推奨しています。」としています。

アメリカでの使用されているファイザー社、モデルナ社、ヤンセン社のワクチンは動物対象研究では、妊娠中や胎児への安全性は認められています。ヤンセン社のウィルスベクターワクチンでも過去の臨床試験で妊娠に対する有害事象がおこっていませんが、なにより豊富な妊娠中のデータが蓄積しているのはファイザー社、モデルナ社のワクチン(mRNAワクチン)です。
初回に発表した妊娠中の安全性を示した報告では妊娠初期でのワクチン接種症例が少なすぎたため妊娠12週未満のワクチン接種に対して慎重に検討という表現となっていましたが、今回は妊娠初期の流産が増加しないことがデータとして追加されました。

「v-safe妊娠レジストリの最新データをもとに、妊娠初期のワクチン接種を評価し、妊娠20週前にmRNA COVID-19ワクチンを接種した約2,500人の妊婦の流産リスクの増加は認められませんでした。」

Lauren Head Zauche, et al. DOI:10.21203/rs.3.rs-798175/v1

2021年7月19日時点で、v-safe妊娠レジストリに5,086名登録されており、そのうち5,063名が単胎妊娠を報告しています。2,491名は、妊娠前または妊娠20週前に少なくとも1回のmRNA COVID-19ワクチンの投与を受けていました。子宮外妊娠や化学流産の35名を解析から除外し2,456人が対象者として検討されています。
対象者のほとんどは非ヒスパニック系白人(78.3%)で、医療従事者(88.8%)であり、年齢は30~34歳(49.1%)または35~39歳(28.2%)と30歳代が多い傾向がありました。過去1回の流産既往がある女性は27.5%、反復流産既往がある女性は9.1%でした。
165名が流産と診断され、そのうち154名が妊娠14週以前に診断されています。妊娠6~19週目の流産の累積リスクは14.1%(95%CI:12.1~16.1%)でした。年齢で層別すると、妊娠6~19週の流産の累積リスクは、20~29歳で9.8%(95%CI:5.9~12.4%)、30~34歳で13.0%(95%CI:10.1~15.8%)、35~39歳で16.7%(95%CI:12.5~20.6%)、40歳以上で28.8%(95%CI:16.8~39.1%)でした。

過去の当院のブログ記事も参考になさってください。
アメリカ・イギリス産婦人科学会の新型コロナワクチンに対する動向
新型コロナワクチン接種 妊娠中、妊娠を希望する人も受けることができます
新型コロナワクチンが女性に不妊症を引き起こすという風評被害(論文紹介) 
不妊治療・妊娠のため新型コロナワクチン接種を止めるべきか(2021/7/15更新) 
新型コロナウイルス(mRNA)ワクチンの妊娠時の効果(論文紹介) 
妊娠中に新型コロナウイルスワクチン接種を推奨する根拠≪授乳について≫ 

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張