不妊治療・妊娠のため新型コロナワクチン接種を止めるべきか(2021/7/15更新)
患者様から「新型コロナワクチン接種をしない方がいいですか?」とのお問い合わせが多いため、記事にいたします。
新型コロナウィルスワクチンの情報は日々変わっておりますし、限られた情報を踏まえての私の解釈も入っておりますので、ご承知いただければ幸いです。
「新型コロナワクチンにおいて不妊にはならない。」のが原則です。
私は個人的にはワクチンを打たないという意思表示がある方以外は、ワクチン接種を治療のために遅らせないでほしい、ワクチン接種を一回で止めないでほしい、とお伝えしております。では、不妊治療を行う上で気になる点が全くないですか?と言われると、患者様によっては新型コロナワクチンの副作用により高熱や体調不良が続きますので、卵巣刺激や胚移植、また手術などは1ヶ月延期などを考慮することも患者様と相談して決めるようにしています。
「新型コロナワクチン接種を1回実施し、2回目実施前に妊娠が発覚したらどうしたら良いですか?」という質問がありますので調べてみました。
初回ワクチン接種後、様々な理由で同様のワクチンをメーカー推奨期間で接種できなかった場合、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は下記のように記載しています。
https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/clinical-considerations/covid-19-vaccines-us.html
「接種したmRNAワクチン(ファイザー社もしくはモデルナ社)が入手できない状況では、異なるmRNAワクチンを28日以上の間隔をあけて接種することが可能です。
同じmRNAワクチンが一時的に入手できない状況では、異なるmRNAワクチンを受けるよりも、2回目の接種を遅らせて(最大6週間)同じmRNAワクチンを受けることが好ましいです。異なるmRNAワクチン製品を2回目に接種した場合、現時点ではどちらの製品も追加接種は推奨されていません。2回目の投与を受けてから2週間以上経過した時点で新型コロナウィルスに対するワクチン接種を完了したとみなされます。
mRNAワクチンを接種した後にヤンセン社のウィルスベクターワクチンを接種した場合の安全性と有効性は確立されていません。
しかし、患者がmRNAワクチン禁忌のため二回目が投与できなくなった場合、28日以上の間隔をおいて、ヤンセン社のウィルスベクターワクチンの単回投与を検討することができます。」
また日本産科婦人科学会や海外の産婦人科学会もワクチン接種に関して声明をだしており、下記の当院のブログでも取り上げています。
新型コロナワクチン接種 妊娠中、妊娠を希望する人も受けることができます
アメリカ・イギリス産婦人科学会の新型コロナワクチンに対する動向
新型コロナワクチン(mRNAワクチン)接種前後の精液所見(論文紹介)
上記を踏まえて検討すると、妊娠中の接種が認められているmRNAワクチンは、1回では新型コロナワクチンへの抗体産生が十分ではないため2回は実施すべきだと考えます。また、厚生労働省が発表しているように、妊娠中・妊娠を希望する人も新型コロナワクチン接種を行っても問題ありませんので、私は妊娠発覚後に接種することに反対ではありません。ただし、妊娠12週未満でmRNAワクチン接種をおこなった症例での安全性を示した論文では、症例数が少ないため絶対安全とはいいきれないのも事実です。ただしCDCの注意書をみるとワクチン摂取の有効性の観点から、少なくとも2週間しかワクチン接種を遅らせることができないため、それであればワクチン接種を完遂されるのがいいのでは?もしくは初回接種する段階で二回目接種時期が決まるわけなので、妊娠中のワクチン摂取をどうしても避けたい場合、体外受精患者様や人工授精の患者様は治療を1周期先送りされるのも選択肢かと思います。
厚生労働省の下記サイト、とても参考になりますので一度ご覧なさってください。
私は妊娠中・授乳中・妊娠を計画中ですが、ワクチンを接種することができますか。
新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
武田/モデルナ社の新型コロナワクチンについて
文責:川井清考(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。