新型コロナウイルス(mRNA)ワクチンの妊娠時の効果(論文紹介)

新型コロナウイルスワクチン接種に関して、不妊治療そして妊娠中の皆様は不安でいっぱいですよね。週単位で新しい報告がでてきていますので、古い情報を与えないよう学会側も慎重に転載・引用を禁じていることが多いです。
日本産婦人科感染症学会のインフォメーションに最新情報が更新されています。
7月19日に発出された、「新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン)Q&A」は、これから妊娠を希望される方の質問にも回答しており、皆様にとって有益な情報ですので、ご覧になることをお勧めいたします。

http://jsidog.kenkyuukai.jp/information/

新型コロナウイルス(mRNA)ワクチンについて、米国疾病管理予防センターはスマートフォンアプリケーション「V-safe」を用いて安全性情報を追跡しています。ワクチン接種した妊娠中の女性の副作用は、非妊娠中の女性と比較して有意な差はありませんでしたが、発熱の発生率が比較的高い傾向にあったことから(2回目の接種後に最大32%)、妊娠中のワクチン接種に対する不安をもたれる方が少なくないと思います。
現在のところ、流産率や周産期合併症の増加も認めていませんが、妊娠12週未満のワクチン接種に関しては主治医と患者様で相談の上、検討されるのがよいかもしれません。
では、新型コロナウイルス(mRNA)ワクチンの妊娠中の効果はどうなんでしょう。
(1)非妊娠中の対照者、(2) 新型コロナウイルス感染症に感染した女性 を比較し、免疫効果をみた報告がでてきましたのでご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Kathryn J Gray, et al.Am J Obstet Gynecol. 2021.DOI: 10.1016/j.ajog.2021.03.023

妊娠中および授乳中の女性における新型コロナウイルスのmRNAワクチン接種の免疫性および反応性について、 (1)非妊娠中の対照者、(2) 新型コロナウイルス感染症に感染した女性の比較することを目的としました。
2施設合計131名のmRNAワクチン接種(妊娠中84名、授乳中31名、非妊娠中16名)を前向きコホート研究に登録しました。新型コロナウイルスのスパイクとRBDのIgG、IgA、IgMの力価を、ベースライン時、2回目のワクチン接種時、2回目のワクチン接種後2~6週目、および出産時に、血清(n=131)および母乳(n=31)中においてLuminexで定量しました。臍帯血(n=10)の力価は出産時に評価しました。酵素結合免疫吸着法により、新型コロナウイルス自然感染から4~12週後の妊婦(n=37)の抗体価と比較しました。ワクチン接種後の症状は、質問票で評価しました.Kruskal-Wallis検定および多重比較を補正した混合効果モデルを用いて、グループ間の差を評価しました。
結果:
新型コロナウイルス(mRNA)ワクチン接種による抗体価は、妊娠中および授乳中の女性は非妊娠中の女性と比較して同等でした(妊娠中、中央値5.59、四分位範囲4.68-5.89、授乳中、中央値5.74、四分位範囲5.06-6.22、非妊娠中、中央値5.62、四分位範囲4.77-5.98、P=.24)。いずれの抗体価も、妊娠中に重症新型コロナウイルス感染症にかかった場合に誘導される抗体価よりも有意に高くなりました(P<.0001)。
ワクチンによって生成された抗体は、臍帯血および母乳サンプルの全てに移行していました。中和抗体価は、母体血清よりも臍帯血清の方が低い傾向にありましたが統計的に有意ではありませんでした(母体血清、中央値、104.7;四分位範囲、61.2~188.2;臍帯血清、中央値、52.3;四分位範囲、11.7~69.6;P=.05)。2回目のワクチン接種により、母体の血液および母乳中のIgGが増加しましたが、IgAは増加しませんでした。

≪私見≫

新型コロナウイルス(mRNA)ワクチン接種は、妊娠中および授乳中の女性において体液性免疫を獲得し免疫性および反応性は非妊娠中の女性と同様で、新生児への免疫伝達は胎盤と母乳を介して行われていました。
IgGはしっかり上昇傾向にありましたが、IgMは二回目でブーストされなかったり、IgAはブースト効果が弱かったり、まだまだ不明な点は多々あります。
現在のところ、新型コロナウイルス(mRNA)ワクチン接種は不妊治療中の患者・妊娠中の女性には有用だと思います。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張