妊娠中に新型コロナウイルスワクチン接種を推奨する根拠≪授乳について≫

妊娠中に新型コロナウイルスワクチン接種を推奨する理由は次の3つに集約されています。
(A)新型コロナウイルス感染症への罹患率の低下
(B)妊娠中でのワクチン接種の安全性
(C)授乳における児への安全性
「授乳」はワクチン接種後にも継続することが推奨されています。現在までブログで「授乳」について触れていなかったので、(C)授乳における児への安全性について取り上げさせていただきます。

①新型コロナウイルス(mRNA)ワクチンが授乳中の母親とその乳児にとって安全であることを示す証拠(ワクチンmRNAは移行しない。)

arden Golan, et al. JAMA Pediatr. 2021.DOI: 10.1001/jamapediatrics.2021.1929

カリフォルニア大学で実施された授乳中の女性7人の新型コロナウイルス(mRNA)接種後4~48時間後に採取した13のミルクサンプルからは、ワクチンに関連するmRNAは検出されませんでした。ワクチン関連のmRNAが乳児に移行しないことの証明となりますし、もし検査で検出できないくらい微量の残留mRNAがあったとしても、乳児の胃腸系で分解されるため、乳児の曝露量はほぼないと考えて良いとしています。

②新型コロナウイルス(mRNA)ワクチンが授乳中の母親とその乳児にとって安全であることを示す証拠(ワクチン接種によって作られた抗体は母乳・臍帯血に移行する)

Ai-Ris Y Collier, et al. JAMA. 2021.DOI: 10.1001/jama.2021.7563

イスラエルで実施された新型コロナウイルス(mRNA)を接種した女性103人(妊娠女性:30人、授乳女性:16人、非妊娠・非授乳女性:57人)と新型コロナウイルス感染が確認された女性28人(妊娠女性:22人、非妊娠・非授乳女性:6人)に対して実施した前向きコホート研究です。妊娠中・授乳中に関係なくワクチン接種群・感染群ともに新型コロナウイルスに対する抗体を獲得できていました。mRNAワクチンは妊娠中の女性に免疫原性を示し、ワクチン由来の抗体が乳児の臍帯血や母乳に移行したことを明らかにしています。

その他、(A)新型コロナウイルス感染症への罹患率の低下、(B)妊娠中でのワクチン接種の安全性に関しては下記を参考にしてください。

(A)新型コロナウイルス感染症への罹患率の低下

Goldshtein I, et al. JAMA 2021; DOI:10.1001/jama.2021.11035
イスラエルで行われた15,000人の妊婦を対象としたレトロスペクティブ研究では、ファイザー社のmRNAワクチンを接種した群としなかった群の新型コロナウイルス感染率は、ワクチンを接種した群の方が、接種しなかった群よりも有意に低かった報告。

(B)妊娠中でのワクチン接種の安全性

Shimabukuro TT, et al. N Engl J Med 2021. DOI:10.1056/NEJMoa2104983
新型コロナウイルス(mRNA)ワクチンについて、米国疾病管理予防センターはスマートフォンアプリケーション「V-safe」を用いて安全性情報を追跡しています。
ワクチン接種した妊娠中の女性の副作用は、非妊娠中の女性と比較して有意な差はなく、流産率を含めて周産期合併症のリスク上昇をみとめなかった報告。(当院ブログ:アメリカ・イギリス産婦人科学会の新型コロナワクチンに対する動向

Gray KJ, et al. Am J Obstet Gynecol 2021. DOI:10.1016/j.ajog.2021.03.023
新型コロナウイルス(mRNA)ワクチンが妊娠中および授乳中の女性に「しっかりした体液性免疫」をもたらし、その免疫原性は非妊娠中の女性で観察されたものと同様であることを示した報告。(当院ブログ:新型コロナウイルス(mRNA)ワクチンの妊娠時の効果

下記記事を参考にしています。
https://www.focusonreproduction.eu/article/News-in-Reproduction-COVID-vaccinations

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張