新型コロナワクチンに対しての最新の米国の推奨(2021/7現在)

ACOG(アメリカ産婦人科学会)、SMFM(米国母体胎児医学会)では、妊娠中の方に新型コロナワクチンの予防接種を強く推奨しているとCNNで記事が出ました。
これは新型コロナワクチン接種による妊娠中のデータが集まってきたこと、またデルタ株のような変異株の流行により新型コロナウイルス感染症が再度拡大していることに起因しているのだと思います。
ACOGが臨床医師向けに2021年7月末時点で出した最新の推奨事項を共有させていただきます。


産婦人科医や産科医療機関は、妊娠中の患者のワクチン接種状況を定期的に評価し、必要に応じてワクチン接種を勧めるべきとしています。新型コロナワクチンを妊婦に接種することで、母体や胎児に悪影響を及ぼすという根拠はなく安全性を示すデータも増えてきています。患者様に新型コロナウイルス感染症についてお話しすることの要点を整理しています。

●妊娠中の新型コロナウイルス感染症のリスクについて

  • 妊娠中は、母体の重症化、ICUへの入室、人工呼吸、死亡などのリスクが高まります。
  • 糖尿病、肥満、心血管疾患などの基礎疾患を持っていたり、高齢の妊婦では、新型コロナウイルス感染症による合併症のリスクが増加することが知られています。

●新型コロナワクチンの安全性

  • 妊娠中の人に新型コロナワクチンを接種しても、母体に悪影響を及ぼすという根拠はなく、その安全性を示すデータも増えています。自己申告による情報に基づきアプリで登録されたアメリカでのワクチン接種後の副作用や妊娠合併症をモニターしたアプリ(v-safe)でも異常報告はあがってきていません。
  • CDCはv-safeの初期報告がワクチン接種による妊娠中の全ての副作用・有害事象の増加は認めていません。
  • ファイザー社、モデルナ社、ヤンセン社の新型コロナワクチンの動物モデル試験の結果から、妊娠中の安全性を危惧することは認めていません。
  • 2021年7月現在承認されている新型コロナワクチンのいずれも、妊娠中または授乳中の人に投与することができます。しかし、妊娠中、授乳中、出産直後の50歳未満の女性は、ヤンセン社の新型コロナワクチンを接種した後に血小板減少症候群(TTS)を伴う血栓症のリスクが稀にあることから、FDAでは妊婦に対しては新型コロナワクチン(mRNAワクチン:ファイザー社、モデルナ社)を推奨しています。
  • ヤンセン社の新型コロナワクチンを使用した後の安全報告では、予想以上に多くのギラン・バレー症候群の症例が報告されていますが、更なる調査が必要とされています。それでも割合としては非常に低く、ワクチン接種による新型コロナウイルスの重症化防止のメリットの方が上回るとしています。
  • 現在、使用可能な新型コロナワクチンには、不妊症を引き起こすものはありません。
  • ワクチン接種後は注射部位の痛み、発熱、筋肉痛、関節痛、頭痛など、注射部位や全身症状(副作用)がよく見られます。これらの多くがワクチンに対する身体の免疫反応の一部で重篤なものではありません。
  • 発熱を伴う妊娠中の女性には、アセトアミノフェンの使用をお勧めします。

●新型コロナワクチンの有効性について

妊娠中の新型コロナワクチンの有効性に関するデータは限られていますが、これまでのところ、妊娠中の人でも非妊娠中の人でも同じように有効であることがわかっています。

  • ワクチン接種後は新型コロナウイルス感染症にかかったとしても重症化するリスクは極めて低いこと、入院患者の多くは新型コロナワクチンを受けていない人であることがわかっています。
  • 現在のところ、ワクチン接種による新型コロナワクチンに対する免疫保護期間はわかっていません。(今後抗体検査などによる持続期間が発表されてくると思います。)

●新生児に対する安全性と有効性

  • 妊娠中の人がワクチンを接種すると、抗体が胎児に移行することを示すデータが蓄積されています。ただし、この抗体が新型コロナウイルス感染症を予防するかどうかは不明です。
  • 現在、乳児・新生児に接種できる新型コロナワクチンはありません。

●継続的な支援

  • 産婦人科医は妊婦の質問や不安事項に最新のデータをもとに対応し、ワクチン接種を提案すべきとしています。同時に「手洗い」「ソーシャルディスタンス」「マスクの着用」などの予防策の重要性を再度強調することが大事です。

https://www.acog.org/-/media/project/acog/acogorg/files/pdfs/clinical-guidance/practice-advisory/covid19vaccine-conversationguide-121520-v2.pdf?la=en&hash=439FFEC1991B7DD3925352A5308C7C42

過去の当院のブログ記事も参考になさってください。
アメリカ・イギリス産婦人科学会の新型コロナワクチンに対する動向
新型コロナワクチン接種 妊娠中、妊娠を希望する人も受けることができます
新型コロナワクチンが女性に不妊症を引き起こすという風評被害(論文紹介) 
不妊治療・妊娠のため新型コロナワクチン接種を止めるべきか(2021/7/15更新) 
新型コロナウイルス(mRNA)ワクチンの妊娠時の効果(論文紹介) 
妊娠中に新型コロナウイルスワクチン接種を推奨する根拠≪授乳について≫ 

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張