子宮内膜受容能のずれが生じるリスク因子(子宮内膜厚/他ブログ)

プロゲステロン投与前に超音波で測定した子宮内膜の厚さは、子宮内膜胚受容能に影響を与えますか?とよく患者様から聞かれます。
実は、2023年1月現在、めぼしい論文はでておらず、ヨーロッパ生殖医学会でのポスター発表のみが根拠となります。

≪ポイント≫

子宮内膜厚が薄い場合は子宮内膜胚受容能がNon Receptiveである割合が増える可能性があります。

ESHRE 2016 poster295: D.Valbuena Perilla, et al.

ホルモン補充周期(HRT)にてプロゲステロン投与前の子宮内膜厚と子宮内膜胚受容能の関連性を482名の女性を対象にしたレトロスペクティブ研究です。
ERA検査はHRT P+5に実施し、子宮内膜厚 6mm未満、6mm-12mm、12mm以上で3群に分けReceptiveとNon Receptiveの割合を比較しました。

子宮内膜厚が6mm未満の薄い群は、正常群(6-12mm)に比べてNon Receptiveの割合が増えていましたが、>12mmの内膜肥厚群は正常群と変わりませんでした。

子宮内膜厚 Receptive(%) Non Receptive(%) 症例数
<6mm 6/14(42.85%) 8/14(57.14%) 14
6-12mm 333/431(77.26%) 98/431(22.73%) 431
>12mm 24/37(64.86%) 13/37(35.13%) 37

≪私見≫

JAMAのRCTで子宮内膜胚受容能検査がずれていても、時間調整なしの胚移植で成績が変わらないという報告がなされました。ERA検査は再現性ありきで行われる検査であるため、子宮内膜胚受容能のずれを可逆的におこすものがあれば除外し検証していく必要があります。
●ルーチンの子宮内膜胚受容能検査が不要とする2022年の論文
胚移植前にルーチンERA検査は不要(論文紹介)
ERA調整下個別化胚移植は成績改善を認めない(Fertil Steril. 2022)
●子宮内膜胚受容能検査の再現性について
内膜の着床の窓はいつも一緒なの?
●子宮内膜胚受容能の可逆的な変化(慢性子宮内膜炎)
適切な状況下でERAを実施しよう(症例報告)
慢性子宮内膜炎とERA®結果は関係する?(論文紹介)
●子宮内膜胚受容能の可逆的な変化(肥満)
女性BMIは内膜受容能のずれに影響する(論文紹介)
●子宮内膜胚受容能に血中プロゲステロンは関連しない
血中プロゲステロンはERA検査の受容能と関連するか?(論文紹介)

文責:川井清考(院長)

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