精子DNA断片化テストが体外受精の出産率に影響する?(論文紹介)

精子DNA断片化(フラグメンテーション)テスト、色々な施設で一般的になってきましたね。私たちも2017年頃より治療選択に取り入れてきました。どのように治療選択にとりいれるかですが、私は「体外受精の受精法の選択」と「原因不明不妊の精査」が大きな目的だと考えています。今回、精子DNA断片化テストの結果が累積出生率に影響するという報告がでてきましたのでご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Sladjana Malić Vončina, et al. Fertil Steril. 2021. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.06.049
Philip Xie, et al. Fertil Steril. 2021. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.09.029

精子DNA断片化テスト(DFI)が高いカップルにおいて、初回体外受精の累積出生率に影響を与えるかどうか検討したコホート研究です。
2007年から2017年に体外受精を受けた不妊カップル2,713組を対象としました。
体外受精(3回までの新鮮胚移植もしくは凍結胚移植)を対象とし,合計5,422サイクルを対象としました。主要評価項目は累積出生率、副次評価項目は受精率と流産率としました。
結果:
媒精群ではDFIが正常なカップルの累積出生率は、DFIが高い(>20%)カップルの累積出生率よりも高くなりました。(女性年齢調整後、conservative rate 48.1%vs. 41.6%、optimal rate 55.6% vs. 51.4%)。顕微授精群ではDFIに依存した差は認めませんでした。
結論:
体外受精初回周期に媒精を考えている場合、DFIが高いと優位に累積出生率が低下することが示されたましたが、統計的に有意に低いCLBRを予測することが示されました。
当研究の対象カップルは女性:40歳未満(平均 32歳前後)、BMI 30kg/m2未満(もしくは30~35kg/m2の場合は10%の体重減少を達成)、男性:54歳以下、精子濃度が1 0万個/mL以上であることとしています。
精子DNA断片化(フラグメンテーション)テストはアクリジンオレンジを使ったSCSAで評価しています。刺激法はGnRHアンタゴニスト法もしくはアゴニスト法で実施し、媒精基準は精子が遠心処理後500万以上としました。

≪私見≫

この論文をみると、媒精か顕微授精が迷う場合には精子DNA断片化(フラグメンテーション)テストが累積出生率の向上に有用であることが示されています。またDFI 40%以上の場合、流産率は相対的に25%高くなることが示されました(統計的に有意差がつきませんでしたが・・・)。
ここで問題なのは、精子DNA断片化がひどい場合、どうすればいいのか?という問題です。もちろん、生活習慣の改善、精索静脈瘤があれば手術などの選択肢です。
媒精で結果が伴わない場合はスパームセパレーター(Halospermやzymoteなど)を使用した顕微授精も提案する方法です。
最近では、精巣内精子はDFIが低いため、TESEで採取して使用するなどの選択肢も提案されています。私は、まずは患者様に非侵襲的な方法から提案していくことが妥当かと考えています。

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文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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