Ferility&Sterilityサイトでよく読まれている精子DNA断片化の記事

私は定期的に不妊症に関わる報告を掲載するサイトをチェックしています。
前論文を読む時間はないですが、興味がある記事は抄録だけをよみ、ブログにする記事はその中で患者様に参考になりそうな報告を見つけたら関連文献含めて目を通すようにしています。Ferility&Sterilityサイトの中に「Most read」という項目があり、その中で上位にあがってきた記事が精子DNA断片化に関連する記事でしたのでご紹介したいと思います。

①2011年ASRMで採択されたM. E. McAseyらのポスターです。

精液の質の低下とDNA損傷は、妊娠率の低下や流産率の増加など男性不妊の要因となります。禁欲日数が長くなると精液の質に悪影響を及ぼす可能性がありますが、射精回数の増加が精液の質に及ぼす影響については、これまで十分に検討されていません。
健常男性を対象に、14日間の毎日射精をしてもらうとどうなるか評価した前向き研究です。
喫煙歴や不妊歴のない平均年齢25歳の健康男性19名が、3~5日間の禁欲期間の後、14日間連続して毎日射精を行い、1日目、3日目、7日目、14日目に精液検査を実施しました。標準的な精液検査に加えて、フローサイトメトリー/アクリジンオレンジを用いたDNA断片化指数(DFI)および高DNA染色能(HDS)、精液酸化ストレステストを実施しました。
結果:
11/19人の男性の完全な検査結果が得られました。11名の男性は全員、標準的な精液検査は正常な状態で試験を開始しました。全ての時点での精液量と、3―14日間の総運動精子数は、1日目に比べて減少しました(P<0.05)。その他のパラメータ(運動性、DFI、HDS、酸化ストレステスト)には有意な変化は見られませんでした。DFIが15%以上であった男性3名のうち2名は、14日目には30%と50%のDFIの低下(改善)を認めました。
結論:
健常男性では最大14日間の毎日の射精をすると、精液量と総運動精子数は減少しますが、運動性、DFI、HDS、酸化ストレステストなどは悪化には至りませんでした。DNA損傷の多い精子を持つ乏精子症の男性は、射精回数を増やすことで改善する可能性がある結果となりました。

②2018年ASRMで採択されたM.A.Bedaiwyらのポスターです。

精子のDNA断片化と原因不明の反復流産の関連を調べていて健常群に比べてSCD法とTUNEL法での精子DNA断片化指数高値は反復流産の原因になるとの結論です。

Pubmed,Embase,Medline,Cochrane,およびGoogle Scholarを用いて開始から2017年3月までの文献検索を実施しました。ランダム効果メタアナリシスを採用し、反復流産群と妊娠可能な対照群の精子DNA断片化指数の推定平均差(MD)を算出しました。父方年齢と平均精子運動率の交絡効果を評価するために、異なる精子DNA断片化検査のアッセイ方法を用いてサブグループ解析を行い、メタアナリシスを実施しました。
結果:
反復流産の既往があり、精子DNA断片化指数(コメットアッセイ、TUNEL法、SCD法、SCSA法)を受けた男性と妊娠可能な対照群を比較した前向き研究12件と後ろ向き研究2件が含まれていました。研究間の有意な差異にもかかわらず、反復流産患者では対照群と比較して、精子DNA断片化指数が有意に上昇していました(MD =11.98、p<0.001)。また、サブグループ解析の結果、SCD法とTUNEL法では、反復流産患者と対照群の間に同様に有意な平均値の差が認められました(SCD法のMD =10.14, 95%CI=1.89~18.39, p=0.02、TUNEL法のMD =14.62, 95%CI=7.04~22.21, p=0.0002)。また、父親年齢と精子運動率は、有意な影響を及ぼしませんでした(p>0.10)。
結論:
TUNEL法とSCD法の両方の測定法において、精子DNA断片化指数高値と反復流産との間に関連性があることがわかりました。今回、父親年齢と精子運動率が因子からはずれた理由は論文の異質性による可能性も高いため更なる調査が必要です。

≪私見≫

世界中で精子DNA断片化検査はホットトピックスなんでしょうね。

私たちも治療の参考に比較的多くの患者様にお勧めしている検査です。最近様々な角度から論文も出てきているので、今後の発展が楽しみです。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張