単一正常核型胚盤胞を戻した際の妊娠判定時のhCG値
Fertility & Sterilityで最も読まれている記事の上位にあがるASRM 2016でポスター発表された抄録です。私たちも血中で判定しておりますので興味深いのでご紹介させていただきます。
着床前診断の普及で単一の正常核型凍結胚盤胞移植が増加しているにもかかわらず、妊娠判定時の血清hCG値による予後の基準値がまだ確立されていない。本研究では、臨床妊娠が予測されるだろうhCGの閾値を特定することを目的とした後方視的な研究です。
2011年6月から2016年3月までに、血清hCGが陽性(>2mIU/ml)となった単一の正常核型凍結胚盤胞移植を実施した患者を対象としました。
血清HCG値(単位:mIU/ml)を凍結融解胚移植後9日目(4w0d)に測定し、母体の年齢、BMI、胚盤胞の拡張グレード、着床率、臨床妊娠率に関して分析しました。
データはstudent's t-test, Chi-square, Kruskal-Wallis, linear and binary logistic regressionで解析ました。
結果:
876例の単一の正常核型凍結胚盤胞移植のうち、91%(n=802)は2mIU/ml以上でした。移植後9日目(4w0d)に血清hCGを測定した649名中、臨床妊娠率71.8%(n=466)でした。臨床的妊娠率は、母体の年齢、BMI、胚盤胞の拡張グレードに影響されませんでした。血清hCGレベルは、BMI>30の患者で低くなりました(OR -4.39 [95% CI (-6.3)-(-2.46), p=0.0012])。血清hCG値は臨床的妊娠率(OR 1.03 [95% CI 1.02-1.04]、p<0.0001)を有意に予測しました。臨床的妊娠のためのhCG閾値は、母体の年齢、胚盤胞の拡張グレード、BMIとは相関していませんでした。
結論:
移植後9日目(4w0d)に測定した血清hCG値は、臨床的妊娠の予測マーカーになります。4w0dの血清hCGが26.5mIU/ml未満であった患者の半数が最終的に生化学妊娠に至りましたが、100mIU/ml以上であった患者の約90%が臨床的妊娠を継続しました。
単一の正常核型凍結胚盤胞移植後9日目(4w0d)の血清hCGレベルに関連した継続的な臨床的妊娠の可能性
臨床的妊娠の可能性 | 移植後9日目の血中hCG値 |
50% | 26.5 |
75% | 67.1 |
80% | 80.6 |
90% | 107.6 |
95% | 134.6 |
>99% | 185.3 |
≪私見≫
私たちのクリニックでは3週5日に血清hCGで判断をしています。着床前診断でtrophectoderm生検をすると妊娠判定時のhCGがやや低くでることが報告されています。これらのことを見据えながら治療方針を立てていく必要があるかと思っています。
以下のブログも参考になさってください。
着床前検査は妊娠時のHCGの低下や周産期予後に影響を与えるの?(論文紹介)
文責:川井清考(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。