油性造影剤を用いたHSG後出生児の神経予後(Hum Reprod. 2024)

子宮卵管造影検査 のヨード曝露については過去のブログでも取り扱っています。
子宮卵管造影の造影剤比較による5年間の追跡結果(論文紹介)
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HSG(子宮卵管造影検査)の油性造影剤は新生児甲状腺機能に影響を与えるの?(論文紹介)
子宮卵管造影の造影剤による甲状腺機能への影響(Gynecol Endocrinol. 2017)
子宮卵管造影の造影剤による甲状腺機能への影響(J Clin Endocrinol Metab. 2015)
子宮卵管造影検査(HSG)中の油性ヨード含有造影剤への妊娠前曝露は、水溶性造影剤への曝露と比較して、小児神経発達に影響を及ぼすかどうかを調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

子宮卵管造影検査(HSG)中の油性ヨード含有造影剤への妊娠前曝露は、水溶性造影剤への曝露と比較して、小児神経発達に影響を及ぼさなさそうです。

≪論文紹介≫

Sarai M Keestra, et al. Hum Reprod. 2024 Oct 1;39(10):2287-2296. doi: 10.1093/humrep/deae183.

子宮卵管造影検査(HSG)中の油性ヨード含有造影剤への妊娠前曝露は、水溶性造影剤への曝露と比較したH2Oil試験の長期追跡調査(オランダ;2012~2014;NTR3270)にて小児神経発達に影響を及ぼすかどうか比較検討しました。本試験でHSG後6ヵ月未満に出生した369名の小児のうち、追跡調査のために連絡を取ることに同意した140名の小児の母親と連絡を取った。追跡調査は2022年1月から7月まで行われました本研究では、油性造影剤(42名)または水溶性造影剤(27名)によるHSG後妊娠した6~9歳の小児69名を対象としました。評価対象は、知能(Wechsler Intelligence Scale for Children)、神経認知的転帰(コンピューターによる神経認知検査)、行動機能(親および教師によるアンケート)、学業成績としました。
結果:
油性造影剤を用いたHSGを受けた母親から生まれた学齢期の小児は、水溶性造影剤を用いたHSGを受けた母親から生まれた小児と、知能、神経認知機能、行動機能、学業成績に関して差はありませんでした。

≪私見≫

この研究はディスカッションでも一貫してヨードを用いたHSGに否定的です。油性造影剤の対象はヨード含有が低い水溶性造影剤ではなくヨード曝露のない対照群にすべきとしていますし、今回の少ない症例数では安全だという証明にはならないとしています。
甲状腺に対するWolff-Chaikoff効果が一過性のものであることを考慮して、HSG後一定期間夫婦生活禁止することや正常に戻るまで6ヶ月間モニターすることも書かれていますが、HSG後の妊娠率が増加するという観点からは中々妊娠しやすい時期に夫婦生活を避けるように指導することは非現実的である気がします。

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文責:川井清考(院長)

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