子宮筋腫の有病率(Hum Reprod. 2024)

40~49歳の女性における子宮筋腫の有病率は、8カ国の21,000名以上の女性を対象とした国際的なインターネットベースの横断調査では、英国 4.5% フランス 4.6% カナダ 5.5% 米国 6.9% ブラジル 7.0% ドイツ 8.0% 韓国 9.0% イタリア 9.8%と報告されています。
Anne Zimmermann, et al. BMC Womens Health. 2012 Mar 26:12:6. doi: 10.1186/1472-6874-12-6.
国や検査の仕方によってばらつきが生じるとされています。今回オーストラリア女性の子宮筋腫の有病率をご紹介いたします。

≪ポイント≫

オーストラリア女性の7.3%前後が45~49歳までに子宮筋腫の診断を受けており、年齢別の発生率は40~44歳の女性が最も高くなっていました(1000人年当たり5.0例)。

≪論文紹介≫

L F Wilson, et al. Hum Reprod. 2024 Sep 1;39(9):2134-2143. doi: 10.1093/humrep/deae162.

オーストラリアの生殖年齢女性における子宮筋腫の推定有病率と推定発生率を調査した報告です。自己報告調査およびリンクされた行政データ(2000~2022年)を用い、Australian Longitudinal Study on Women's Healthに参加した1973~1978年生まれの女性8066名を対象とした観察的前向きコホート研究です。
結果:
22年間追跡したオーストラリア人女性8,066名のうち、45~49歳までに子宮筋腫の診断を受けた女性は推定7.3%(95%CI 6.9, 7.6)でした。罹患率は年齢とともに増加し、40~44歳の女性で最も高くなりました(1,000人年あたり5.0、95%CI 4.3-5.7)。子宮筋腫のある女性は、重い月経困難症でした。また、鉄レベルの低下、子宮内膜症、自己評価による健康不良を報告する傾向が高く、診療所を年に2回以上受診していました。

≪私見≫

どのサイズの筋腫から疾患として判断するかなど異なると思いますが、有症状を要してもおかしくない子宮筋腫をもつ女性が10-15名に1名がいると思うことが大事なのかもしれません。
国内では、子宮筋腫は女性の3割が診断をうけたことがあるとされていて、約55万人の女性が子宮筋腫の治療を受けていると推定されていますが、これは20歳から49歳(本研究の対象年齢)の女性の1.5%に過ぎないです。3割というのは超音波機械の解像度の向上、小筋腫までふくめているためと考えられますが、一定頻度で治療をうけていない患者がいるのは間違いないと思います。
子宮筋腫、特に貧血との関連はQOLの低下に関連していて、適切な治療によってQOL改善する可能性が高いとオンライン調査でも報告されています。(Kaori Koga, et al. J Obstet Gynaecol Res. 2023 Oct;49(10):2528-2537. doi: 10.1111/jog.15758. Epub 2023 Jul 31.)
子宮筋腫を有する女性は月経困難症がひどい割合が高い以外に、BMIが高い女性、初潮年齢が早い女性、出産経験が少ない女性、健康状態が不安定な女性、子宮内膜症やPCOSである女性に多いという報告があります。

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文責:川井清考(院長)

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