高血圧と妊娠期間との関係(Hypertension. 2024)

過去のブログで、正常血圧範囲内でも収縮期血圧は高すぎない方が良い。(Fertil Steril. 2024)をご紹介しました。高血圧と妊娠しやすさとの報告は様々あります。
血圧と妊娠率の低下と関連
 Nobles CJ, et al. Hypertension. 2018;71:904–910.
 Hong X, et al.Am J Obstet Gynecol.2019;221:470 e471–470 e410.
血圧と妊娠率の低下と関連しない
 Grieger JA,et al.BJOG. 2019;126:852–862.
 Eisenberg ML, et al. Hum Reprod. 2016;31:2369–2376.
中国から新しい報告がでてきましたのでご紹介いたします。

≪ポイント≫

母体高血圧は、血圧のコントロールの有無に関わらず、妊娠までの期間延長および不妊症リスク上昇と独立して関連していました。妊娠前から高血圧予防に努める健康的な生活を心がけましょう。

≪論文紹介≫

Wenxue Xiong, et al. Hypertension. 2024 Sep 27. doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.124.23562.

中国広東省の全国無料妊娠前検診事業を利用し、女性パートナーが高血圧と診断された1422組のカップルと、女性パートナーが高血圧でない997組のカップルで妊娠しやすさを比較検討した前向きコホート研究です。
結果:
高血圧のない女性カップルと比較して、血圧コントロールされている女性カップル(時間比、1.47[95%CI、1.24-1.73])または血圧コントロールされていない女性カップル(時間比、1.59[95%CI、1.34-1.90])は、妊娠までの期間延長および不妊症リスク増加(RR、1.19[95%CI、1.09-1.31];RR、1.24[95%CI、1.14-1.34])を認めました。操作変数法・傾向スコアマッチング・逆確率重み付け(IPW: Inverse Probability Weighting)法どの方法を用いても、高血圧の女性カップルでは、血圧コントロールと妊娠までの期間(時間比、0.68[95%CI、0.34-1.36];P=0.270)または不妊症リスク(RR、0.97[95%CI、0.70-1.34];P=0.849)に関連は認められませんでした。高血圧と妊娠までの期間の延長との関連は、高齢(35歳以上)または妊娠歴のない女性で顕著となりました。

≪私見≫

全ての報告が、比較的新しい年次の報告です。民族・食生活など対象となる患者層ゆえに結果が異なるのかもしれません。高血圧の女性は、正常血圧の女性に比べて、腟潤滑性が低下し、オーガズムの回数が減少し、性交痛頻度が高くなるという報告が古いですがあることを知って、知らないことがまだまだあるなと感じた次第です。(Duncan LE, et al. Am JHypertens. 2000;13:640–647.、Doumas M, et al. J Hypertens. 2006;24:2387–2392. )

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文責:川井清考(院長)

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