正常血圧範囲内でも収縮期血圧は高すぎない方が良い(Fertil Steril. 2024)

WHOからも「高血圧は世界中で早期死亡の主要原因です」と声明がだされるほど高血圧は健康上予防すべき健康状態です。ただ、高血圧の基準は、心血管疾患に焦点を当てたデータを使用して、妊娠にとっての適切な基準は定まっていないのが実情です。
正常血圧範囲内も含めた収縮期・拡張期血圧と体外受精予後との関連を示した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

正常血圧範囲内でも血圧は高すぎない方がよさそうです。健康的な生活習慣を心がけましょう。

≪論文紹介≫

Shujuan Ma, et al. Fertil Steril. 2024 Oct;122(4):667-677. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.05.150.

正常血圧の女性(収縮期血圧90~139mmHg、拡張期血圧60~89mmHg)が体外受精結果に収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)が影響を与えるかどうか調査したレトロスペクティブコホート研究です。2016年1月1日から2020年11月30日に中国の生殖医療施設で体外受精を受けた73,462名の初回採卵初回胚移植のみを対象としました。
評価項目は、臨床妊娠率、異所性妊娠率、妊娠初期流産率、妊娠中期/後期の流死産、周産期転帰を含む生児出生率としました。
結果:
正常血圧の女性の場合、収縮期血圧が10mmHg上昇すると、生児出生の調整相対リスクは0.988(95%信頼区間、0.981-0.995)となりました。拡張期血圧は調整後関連を認めませんでした。収縮期血圧および拡張期血圧の上昇は、正常血圧群において、妊娠初期流産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスク上昇と関連していることがわかりました。感度分析により複数の交絡因子を調整した後でも、収縮期血圧と生児出生に関連性が確認されました。サブグループ分析では血圧が生児出生に及ぼす影響にばらつきがあることがわかりました。高血圧症のサブグループでは、収縮期血圧が10mmHg上昇すると、生児出生が5.4%減少することが分かりました(10mmHg当たりの調整相対リスク0.946、95%CI 0.907-0.986)。

≪私見≫

収縮期血圧は血管内皮障害と関連しており、周産期合併症と関連するのはイメージがつきやすいです。妊娠前女性の血圧は、30~40歳またはBMI 24以下の女性で特に大きな関連を示しました。明確な不妊原因をもたない女性ほど血圧の影響が強く関連してそうですので、生活習慣の改善に努めることが重要かもしれません。

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文責:川井清考(院長)

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