夫婦年齢と妊娠しやすさの関係(Hum Reprod. 2024)

加齢に伴って妊娠しづらくなることは出産経験のないカップルにおいてより顕著であることが研究で明らかになっています(Steiner and Jukic, et al. 2016; Wesselink, et al.2017)。カップルの年齢を組み合わせた妊娠しやすさを調べた研究は過去にもありますが、年齢差のあるカップルは数がそこまで多くなく比較検討に十分な症例数があつまっていませんでした(de La Rochebrochard ,et al. 2003; Rothman, et al. 2013; Wesselink, et al. 2017)。
中国からの不妊でないカップルを対象としたビッグデータでの年齢による妊娠しやすさの報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

夫婦の至適出産可能年齢の範囲および年齢の組み合わせは出産経験の有無によって異なりそうです。

≪論文紹介≫

Yue Zhang, et al. Hum Reprod. 2024 Jan 5;39(1):201-208.  doi: 10.1093/humrep/dead209.

夫婦の年齢範囲、および夫婦の年齢の組み合わせは妊娠のしやすさと関連があるかどうかを調査したレトロスペクティブコホート研究です。5,407,499組の生殖年齢夫婦(不妊症と診断されていない)が、2015~2017年に全国無料妊娠前検診事業に参加しました。彼らは妊娠するまで3ヵ月ごとに電話インタビューを通じて妊娠転帰を追跡調査されるか、1年間追跡調査されました。主要評価項目は妊娠までの期間としました。年齢および配偶者の年齢差と妊娠率との関連は、制限付き三次スプラインを用いて評価しました。
結果:
大規模コホートにおいて、出産経験がある妊娠カップルの至適出産可能年齢は出産経験がない妊娠カップルより高くなりましたが、出産しやすさは年齢とともにより急激に低下しました。女性の出産可能性の低下は年齢とともに顕著であり、女性が35歳以上であった場合、妊娠しやすさは出産経験の有無に関わらず約30%低下しました。出産経験がない妊娠カップルでは、24歳以下の同年代カップルの妊娠しやすさが最も高く、配偶者の年齢差が大きくなるにつれて低下しました。しかし、男性が若くても妊娠しやすさの向上には関連がなさそうでした。出産経験がある妊娠カップルでは、女性が25~34歳で男性パートナーとの年齢差が5歳以内の夫婦が妊娠しやすさが高く、男性パートナーとの年齢差が妊娠しやすさに及ぼす影響は女性が40歳前後になると明確になりました。男性が若くても女性が40歳以上であれば妊娠しやすさの改善には繋がりませんでした。

≪私見≫

面白い報告ですね。過去の報告とも整合性がありますし、実際の妊娠しやすさを反映した結果なのだと思います。妊活をはじめる前の事前確率を提示することが治療計画を立てる上で非常に重要です。出産既往と女性年齢はキーファクターで、男性年齢も影響しないわけではないというのが答えのようです。

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文責:川井清考(院長)

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