原因別 体外受精の治療成績(Am J Obstet Gynecol. 2023)
体外受精の新たな生児獲得率を予測するコホート研究がでてきました。過去にもブログに取り上げています。
- アメリカの体外受精データベースを用いた妊娠予測モデル(論文紹介)
- 体外受精妊娠予測ツール(アメリカ・イギリスのデータベースから)
- 「ART Caluculator」について
- 米国の着床前診断を除く胚移植あたりの出生率(論文紹介)
アメリカでの3回目までの採卵をおこなった場合の累積での生児を授かる割合です。
≪ポイント≫
女性年齢が累積生児獲得率と最も強く相関、BMIが低く、経産数が多く、経妊娠数がある場合は高い累積生児獲得率と関連していました。卵巣予備能低下や子宮因子は累積生児獲得率の低下と関連し、男性因子、卵管因子、排卵障害、原因不明不妊は累積生児獲得率に影響を与えていませんでした。
Audrey J Gaskins, et al. Am J Obstet Gynecol. 2023 May;228(5):557.e1-557.e10. doi: 10.1016/j.ajog.2023.01.014.
207,766個の自己卵子の胚移植周期を受けた196,916人の女性と36,909個のドナー卵子の胚移植サイクルを受けた25,831人の女性を含む、National Assisted Reproductive Technology Surveillance System 2016-2018を使用し原因別の体外受精成績を比較検討したコホート研究です。新患と再診患者において、1、2、3回の採卵後12ヶ月以内にすべての胚移植(新鮮および凍結)を行った場合の累積生児獲得率を推定するモデルを開発しました。ドナー卵子を使用した患者では、1回目、2回目、3回目の胚移植後の累積生児獲得率を推定しました。年齢、BMI(欠損値の18%をインプット)、経産数、経妊娠数、不妊症の原因別で調整したMultinomial logistic regression modelを用いて、累積生児獲得率を推定しました。
結果:
自己卵子の胚移植周期を受けた新患および再診患者において,女性年齢は累積生児獲得率と最も強い相関がありました。結果は一貫していませんでしたが、BMIが低いこと、経産数、経妊娠数≧1であることが高い累積生児獲得率と関連していました。卵巣予備能低下、子宮因子、その他の不妊症(種々の原因と原因不明不妊を除いたもの)の診断は、累積生児獲得率の低下と関連し、男性因子、卵管因子、排卵障害、原因不明不妊は、累積生児獲得率の向上と関連していました。モデルによると35歳、BMI 25、妊娠歴なし、原因不明不妊症と診断された新患は、1回目、2回目、3回目の採卵後に48%、69%、80%の累積生児獲得率になる。卵巣予備能低下している場合の累積生児獲得率はそれぞれ29%、48%、62%、40歳(原因不明不妊)の場合はそれぞれ25%、41%、52%となります。レシピエントの特徴は、ドナー卵子患者における累積生児獲得率とほとんど関連しませんでした。
≪私見≫
過去に言われていることと同様の結果ですが、卵巣予備能低下が体外受精時のtime to live birthに強く影響を与えていることがわかりました。卵巣予備能低下で過度の不安を煽らないことは大事ですが、体外受精成績を見るにつけ適切な段階でステップアップすることの大事さを感じてしまいます。
このようなモデルは、最初にどこまでは外れ値を設定するか、定義づけをどうするかが大事になります。今回のモデルは、とても参考になる設定だと感じています。
文責:川井清考(院長)
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