米国の着床前診断を除く胚移植あたりの出生率(論文紹介)

国内の成績を見ると、凍結融解胚移植のほうが新鮮胚移植より成績が高くなっています。ただし、海外からの報告をみると、新鮮胚移植は凍結融解胚移植と同等の成績であるとされていますので、国内の生殖医療ガイドラインも新鮮胚移植と凍結融解胚移植は同等と記載されています。当初は海外の凍結技術がよくないのかな?と考えていましたが、米国のSARTデータベースを用いた今回の報告をみると、新鮮胚移植が悪くないから差がつかないんだと感じています。人種でしょうか。手技でしょうか。今後も検証を続けなくてはいけないポイントだと感じています。2016-2018年のSARTデータベースの報告をまとめてみました。

≪論文紹介≫

Michael S.Awadalla.,et al. F&S Reports. 2022. Volume 3, Issue 2, June, Pages 131-137. DOI: 10.1016/j.xfre.2022.02.006

米国のSARTデータベースを用いた2016年から2018年に着床前診断を除外して実施された体外受精周期の妊娠成績を比較検討したレトロスペクティブコホート研究です。分析対象は223,377周期(336,888胚)の胚移植です。評価項目は胚1個あたりの生児獲得率、多胎妊娠率としました。

まとめ:
出生率が高いのは若年女性の5日目胚盤胞でした。26-34歳までは結果はかわりませんでした。若年女性では、新鮮胚と凍結胚の成績が同じでしたが、35歳以上の女性では凍結胚の方が出生率は高くなっています。
5日目胚盤胞の次に出生率が高かったのは、凍結6日目胚盤胞であり、次いで新鮮6日目胚盤胞となりました。凍結第7日目胚盤胞は最も低い出生率を示し、新鮮第7日目胚盤胞は十分なデータがありませんでした。
3日目初期胚については,新鮮胚は凍結胚よりもわずかに高い出生率となりました。
●(参考)34歳女性の胚移植あたりの出生率
新鮮5日目胚盤胞:38%、凍結5日目胚盤胞:38%、新鮮6日目胚盤胞:26%、凍結6日目胚盤胞:31%、新鮮7日目胚盤胞:27%、凍結7日目胚盤胞:23%新鮮3日目初期胚:19%,凍結3日目初期胚:15%
●(参考)3日目初期胚移植の形態学的成績
出生率が高かったのは8細胞(24%)であり、次いで8細胞以上(23%)、7細胞(17%)、6細胞(8%)、5細胞(5%)、および4細胞(1%)でした。
●(参考)3日目新鮮胚移植における多胎のリスク
新鮮3日目単一胚移植 出生率:15.5%、双胎率:1.8%
新鮮3日目二個胚移植 多胎妊娠率
25歳:26%、30歳:26%、35歳:22%、40歳:13%
●(参考)5日目新鮮胚盤胞移植における多胎のリスク
新鮮5日目単一胚盤胞移植 出生率:44.0%、双胎率:1.6%
新鮮5日目二個胚盤胞移植
25歳:47%、30歳:44%、35歳:35%、40歳:23%
●(参考)5日目凍結胚盤胞移植における多胎のリスク
凍結5日目単一胚盤胞移植 出生率:44.8%、双胎率:1.3%
凍結5日目二個胚盤胞移植
25歳:43%、30歳:40%、35歳:34%、40歳:24%

文責:川井清考(院長)

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